ボクだけしか知らない
ふわりと白鳥宮の周りに沢山咲き誇っている薔薇の香りがする。
先程までいたブルーアーとレドモンドは勉強をしに図書室へと向かって行った。その際に「バイオレット達も来ないか?」と誘われたけれどグリーンヒルが行かないと言ったのでボクもいいやと断った。勉強とか面倒だしグリーンヒルともう少し白鳥宮にいたいし…。
そう色々回想していると視線を感じ、ちらりとそちらに視線を移すとグリーンヒルがボクをジッと見つめていた。
「…グリーンヒル?どうしたの?」
「いや…」
あれ、珍しい。
視線が交わっても未だ逸らさないグリーンヒルを見てそう思う。
いつもなら顔を赤くしてすぐに逸らされるのに。
「………」
「?…グリーンヒル?」
やっぱり何かおかしい気がする。
いつもなら筋トレを毎分足りともかかさず続けているはずなのに、何故か今日はその筋トレをする手を休めてまでボクの方を見たまま。
「グリーンヒル、やっぱり何か変だよ。熱でもあるの?」
「……いや…」
何だと思ってグリーンヒルを暫く見続けると、どうしたんだと声をかけられる。
「どうしたはキミでしょ?本当に大丈夫?」
「ああ、いやすまない…ただ」
今すごく眠くてな…。
そう言って目を少し細めた。
なるほどね、確かにさっきから活気が無い理由も眠いのなら分かる。
それに良く聞いたら声も少し気怠げで。
「…寮戻る?」
「いや、バイオレットはここにいるのだろう?なら俺もいる」
グリーンヒルが戻るのならボクも紫寮に戻るんだけどな、と少しばかり苦笑してしまいながら「そっか」と声をかけた。
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