「………ショウ、ナツキ、話聞いてるの?」
「……辛うじて聞けてる」
「はい、聞いてますよぉ」
「その態勢で?」
ボクは美風藍。シャイニング事務所所属のアイドル。目の前にいるのはボクがマスターコースのときに指導した後輩、来栖翔と四ノ宮那月。
マスターコースの影響か、この二人との仕事はわりと多くて、今日も雑誌の写真撮影とインタビューがある。で、今はその大まかな流れを確認していたのだけれど──
「ナツキはなんでショウを抱きしめてるの? いつものことだけど、もうすぐ収録が始まるんだよ?」
ナツキはショウを膝にのせて、後ろから抱きしめながらショウが持ってるアンケートを読んでる。
明らかに非効率的だ。
「ほら那月、藍もそう言ってるし、そろそろ離せよ」
「えー、いくら藍ちゃんに言われても、これは譲れません! 翔ちゃんは僕のですから。……それとも、翔ちゃんは僕のことが嫌い? 抱き締められてるの、嫌?」
後半は、ナツキがショウの耳元で囁くように言っていた。
「い、嫌じゃねーけどさ……もう撮影が始まるのに、誰かに見られたらどうすんだよ」
耳にかかった息に、ショウが顔を赤らめる。……二人とも、ボクのことを忘れてるんじゃない?
「それ以前にボクに見られてるよね」
「見させませんよ、僕の可愛い翔ちゃん。お仕事じゃないときの翔ちゃんは、僕だけのものです」
「那月………」
──なるほど。これが恋は盲目、ってやつか。興味深いけど、見てられないな。
……さて、撮影は僕からだし、さっさと行こう。少し早めに行っても問題ないはずだし。
「………今度やったらロケットパンチかな…」
スタッフに見られないと良いけど。
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bkm