かりかりと木炭で絵を描き続ける恋人に目をやる。
今白鳥宮には俺達しかおらず、残りの二人は一緒にどこかへと行ったようだ。


「バイオレット」
「何?」
「あ、いや、何でも無い…」

口を開けて恋人、バイオレットの名前を呼ぶが言いたい事が言えない。

バイオレットとは最近付き合い始めた。日数で言うと一週間前程か。
俺から告白すると「…本当に?冗談とか言ったら目に木炭刺すよ?」と真顔で言われた。怖かった。
本当だ信じてくれとまるで浮気を疑われた者のように必死になって言い続けたら、バイオレットはクスリと小さく笑い、「冗談だよ。…ボクも好き」と言ってくれた。可愛過ぎて天使にしか見えなかった。


それからまあ、付き合う事になったのだが、この一週間別に何も変わらない。
たかが一週間、とも思うが、手を繋ぐどころか本当に前と何も変わらず、二人だけで会う…みたいな事も会話も何もかも変わらない。

最初はまだ一週間、と思っていたが、ニヤニヤしたレドモンドから「そのままだとせっかく付き合えたのにバイオレットが逃げるぞ?良いのか?」等と言われたせいで今日は何だか落ち着かない。てか何でアイツは俺らが付き合っているのを知っているんだ。
その為、今日あの二人がいないのも「俺達は俺達で楽しむから、お前も頑張れよ?」とこれまたニヤニヤした顔でブルーアーを連れ去ったからだ。

…ここまで回想して、もう一度バイオレットに目をやる。
真剣な顔でキャンバスに何かの絵を描き、たまに手を止め「…うーん…」などと唸りながら絵を見る。

可愛い。

じゃなかった。どうしようか。
せっかく二人きりなんだ、レドモンドにも(一応)気を使わせてしまったことだし…

ずっと一人で考え込んでいた為、バイオレットがこちらを見つめている事にも気付かなかった。






「あ…」
結構な時間が経っていたことに気付く。
しまった、これではいつもと変わらないじゃないか
ちら、とバイオレットを見ると彼はもう絵を描き終えたのか、こちらをずっと見つめていた。

「…!!!」
「……何」

いや、何とはこちらが聞きたいが今は聞けない。
何故かバイオレットが不機嫌だ。

「…バイオレット?」
「………」

バイオレットは立ち上がり、こちらへ近付いていく。
名前を呼んでみるが何も応答は無い。

「…す、すまな「…き…?」?」

聞こえないともう一度と聞き返すと、バイオレットは俺に抱き着いてき……え?

「バ、ババババイオレット!?」
「誰それ」

背が低いバイオレットが俺に抱き着いてこちらを顔を上げて見てくる様子は小動物みたいで可愛い。

「ねえ、ボクのこと本当に好き…?」
「んがっ!?」

ヤバい変な声出た。
そんな俺にも気にしないで、バイオレットはじーっと俺を見つめる。

「…あ、ああ」
「…なら何で?」

ぽつりとバイオレットが零した言葉に、え?と言葉が漏れる。

「…前と何も、変わんないし…
ボクの事、もう嫌?つまんない?」
「そんなこと…っ!!」
「なら、…その、」

好きって言ったり、手繋いだりして、


1.



可愛さのあまり思い切り抱き締めてしまった。
みし、という音と共にバイオレットから「ぐぇっ」と言う声が聞こえて慌てて放したら蹴られた。


後書き_(:3」∠)_→



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