「…!」

オレを見た瞬間俯く先輩。
最近はいつもこうだ。……というか、オレの"可愛い先輩が好き"発言から。

「先輩?」
「!あ…うん、何?」
「いえ、何も…
その、前は急にすみません。」

バイオレット先輩は視線をうろうろと彷徨わせた後、別に大丈夫だと言った。

「…………」
「…あの…」
「!!」

うん、絶対大丈夫じゃない。
まあ確かに同性…しかも寮弟に軽く誤解されるような事言われたらそうもなるよな…あの時すぐに「先輩として」と言っておけば良かったのにオレの馬鹿。

「…あ、あれは、」
「大丈夫」

え、と小さく声が洩れた。

「チェスロックが先輩としてっていう意味で言ったって事は分かってるから」

違う

「ただ単にボクが気にし過ぎなだけ」

違う

「ボクが意識しちゃってるだけだから」
「オレは」

違う、『先輩として』だなんてただ誤魔化しているだけだ。
オレは、ずっと前から、

「オレはいつも意識してました」
「……!!!」

バイオレット先輩が息を呑んだ。
ああ、オレ本当に馬鹿。
やめろ、これ以上先輩に迷惑かけるな

「オレは先輩のことが、」
「…チェスロック」

もうオレは寮弟として失格だ、きっと先輩だって寮弟を解消するだろう。
だったらずっと心に留めていた本心も何もかも、ここで。

「先輩のことが、好きなんです」


してした


風が吹いた。

先輩の顔を見ることが出来ない。

先輩は静かに「…ボク、寮に戻るね」と言った。
その時も先輩の顔を見ていないが、きっとオレを蔑んでいただろう。

(もしも時間を戻せたら、)


後書き→



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