降旗光樹の疑問 (2/3)
「水戸部先輩、タオルとコールドスプレーです。どうぞ」
俺、降旗光樹には、常々不思議に思っていることがある。それは──
「…………(薄笑)」
「ありがとう、だってさー。俺のはー?」
「あ、はい。小金井先輩のはこっちです」
「サンキュー!」
「………………」
「え? レモンのハチミツ漬けあるの? 食べる食べるっ」
──コレだ。
なぜ小金井先輩は水戸部先輩の言ってることが分かるのだろうか。喋ってないのに。
「美味いっ。流石は水戸部だな」
「…………(困)」
「なんだよー。照れるなって」
うりうり、と水戸部先輩の脇腹を肘でつつく。
(今、照れたのか…?)
少し困った顔はしたが、よもやアレが照れ顔とは。よくわからない人だ。
「小金井先輩はなんで水戸部先輩の言いたいことが分かるんですか?」
「うわぁっ!」
若干失礼なことを考えていると、いきなり後ろから声が聞こえた。
「うぉっ!? なんだ、黒子かぁ……」
心臓バクバクしたー、と言いながら、小金井先輩はコールドスプレーをふくらはぎにかけ、あ゛ぅあ゛ぁぁぁ、とよくわからない悲鳴(?)をあげる。
「で、なんでですか?」
黒子がまた質問する。
「……俺も気になります。水戸部先輩は喋ってないのになんで分かるんですか?」
ドリンクを配りながら言うと、そうだなぁ、とドリンクを飲みながら考え込む小金井先輩。
「ん〜……」
少しの間考えて、ガバッと顔を上げる。
「あぁ、アレだ!」
「「アレ?」」
俺も黒子も首をかしげる。
うむ、と頷く小金井先輩。
「それはな……」
「それは?」
「愛のちかr『全員集合! 五秒で集まらないとフットワーク倍にするわよ!』うぉぉ!? やばい! フットワーク倍は死ぬっ。行くぞ水戸部!!」
「………(コクリ)」
「行きましょう降旗くん」
「お、おう」
なんだか釈然としない……が、フットワーク倍はキツいので今は胸に仕舞っておこう。
「降旗くん、いつまでタラタラしてんの! 外周二周追加ッ」
結局、外周二周追加されてしまった。
(カントクは鬼かっ…! ……それにしても、小金井先輩、何て言いかけたのかなぁ)
愛の……と聞こえた気がするが、気のせいだろう。 気にするだけ無駄かもしれない。
既にパス練習を始めている先輩二人を横目に見ながら、降旗は外周に向かうのだった──。
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