2012-03-31
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羽鳥が目を覚ますとブラインドの隙間から見える明かりもなく、時間は夕刻を過ぎてしまっているのだと感じ、薄暗い部屋の壁に掛る時計を確認する。
長針と短針が一直線に文字盤を割っていた。
胃の中身を全部出してしまったため、二日酔いの様子はない。
「6時…」
「やっと起きたかバカトリ!」
眠りに誘われた時には、自分の頭を抱いていた恋人は、全く逆のポジションで羽鳥に寄り添っていた。
と、言うよりは、羽鳥が抱きしめていたと言った方が正しいのかもしれない。
モゾモゾと羽鳥の胸から顔を上げた吉野は、不機嫌そうな顔をしていた。
「あぁ」
「『あぁ』じゃねぇよ!いい加減離せ!」
身を捻り抗議する吉野を、羽鳥はお構いなしに抱き直した。
「おい!トリ!」
「もうちょっと、このまま」
「あ、甘えんな!!」
「『甘えろ』って言ったのはお前だろ?」
自分の発した言葉をそのまま返された吉野は、ムスっと拗ねた様子で羽鳥を睨む。
「ハンバーグ作ってくれるなら、このままにしてやる」
「ハンバーグだけでいいのか?」
「えっ、ん〜と、出汁巻き卵と…あっ、テレビで見たレタス炒飯!」
「わかった、作ってやるから…。
だか…ら…」
語尾が薄っすらと消えていく羽鳥の様子に、吉野は『まぁ、仕方ないか』と、ワーカホリックな恋人の胸に再び顔を埋めるのであった。
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