2012-03-17
羽鳥弱ってる。
続きで嘔吐シーンあります。
って、ガチじゃないけど…。
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「あー、さっぱりした…」
バスルームから出てきた吉野は、タオルで頭を拭きながらリビングに足を向けた。
“ガチャ”
午後11時。
周りの静けさに一石投じたかと思うくらいハッキリ聞こえた帰りを知らせる音。
待ち人が返ってきたと踵を返す。
が、恥ずかしくなって再び背を向ける。
(な、何か、出迎えてるみたいじゃん。
で、でも、待ってたのは事実だし…。
でも、そんな喜ぶなんておかしいし…。
この場合って、出迎えるべきなのか?
いや、リビングで「おう、遅かったな」とかって言うのが正解か?)
と、色々と考えを巡らしていると、その扉の向こうから、聞き慣れた…、いや、聞き慣れたくない着信音が鳴る。
恋人としての自覚はハッキリ言って薄いが、やはりその音は嫌いだ。
二人で旅行に行ってからは特に、そう思う様になった。
(…やっぱり、こういう時って…)
吉野は再び振り返り扉を見る。
その向こうの声は、どれだけ小さくても耳に入ってきてしまう。
「はい、羽鳥」
(やっぱり、出たか…電話…)
「いえ、大丈夫です。」
ドアノブが動かないコト、羽鳥の言葉使いが丁寧なコト、そして、大丈夫と言ったコト…。
総合すると…。
「はい…。…はい……。」
(この後に続く言葉は…)
「わかりました、高野さん。…今から向かいます。」
(やっぱり…)
“ガチャ”
再び鍵が掛けられ、旅行事件の再来と言わんばかりに、羽鳥の足音は遠くに消えて行った。
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