2012-08-10
(昨日が)ハグの日って事で、悶々したから、15分で書いた。朝比奈にワガママを言わせてみた。
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龍一郎様の腕の中は、いつも温かい。
体勢的には私が龍一郎様を抱き締めているのだが、精神的な部分で言うと前者が勝る。
昨夜の情事の気だるさが残るベッドの中、龍一郎様は私の腕の中で、座りの良い位置を探そうと頭をゴソゴソと動かしている。
随分と前からお互いに目を覚ましているが、テキパキと動く気にも慣れず、無言のままただ自堕落に時間を過ごしている。
たまの休みなのだ、許されるだろう。
龍一郎様がゴソゴソと動く度に、黒くしっかりした髪が二の腕の柔らかな皮膚にチリチリと刺さって、こそばゆい。
ふと、二の腕から肩にかけて重さを感じなくなり、目を開くと、心配そうな龍一郎様の顔。
「なぁ、腕」
「はい?」
「腕、ダルくないか?」
目覚めてから、なんとなくいつもの癖で、龍一郎様に腕枕していたが、そう言われてみれば少しダルい。
「ええ、多少は」
その言葉に龍一郎様は、眉間に皺を寄せる。
「なら、イヤだと言え」
龍一郎様はなんだかんだでとても優しい。
ワガママだし、自分勝手だし、偉そうだし…でも、結局の所、タイミングを見て、事が良い方向に行くように舵取りをしているのだ。
風を読むように、人の心を読むのが龍一郎様のやり方だ。
しかし、対 私となると、急にその風を読む力を放棄する。
本人にその自覚があるかわからないが、少なくとも他の人に見せない顔を私だけが見ていると思うと、嬉しくて仕方ない。
「イヤだ、と言えばどうするんですか?」
「そりゃ、辞めてやるよ」
そう言うと、龍一郎様は起き上がる。
その背中は拗ねている様に見える。
それは私の勝手な想像だろうか?
ただ、一つ言えるのは、その身体に触れていたいと言う事。
「イヤです」
私はそう言って、龍一郎様に手を伸ばす。
手を掴むと振り向いた龍一郎様は、やはり少し拗ねていた。
「だ、だから」
違いますよ。
腕がダルくなるのがイヤではないのですよ、龍一郎様。
「貴方と離れたくありません」
今度は真っ赤な顔を見せる。
「離れたくありません」
引き寄せて抱き締めると、龍一郎様の腕が私の背中に回る。
抱いているのに、やはり抱かれた気分になる。
貴方は私の腕の中に居る時、いつも私の心音を確かめるように耳をピタっと胸にくっ付ける。
トクトクと鳴る臓器の音を貴方はどう思って聞いているのでしょう?
情事の時の様に、早鐘を打つ事はありませんが、こうして貴方に抱かれていると、何もかも穏やかに感じます。
「龍一郎様」
「なんだ?」
「…いえ…」
「なんだよ!」
貴方に抱かれていると思っているのは、私だけの秘密です。
「もう少し、このままで居ましょうか?」
「…あぁ」
この腕の中に居ていいのは、私だけで有りたい…。