2012-07-15
※貴女が想像するオネエ系口調で読んで頂ければ幸いです。
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どぉも、アマドコロですぅ。
ええ、鳴子百合じゃないのよ。
アマドコロよ、ア・マ・ド・コ・ロ!
えっ?なんで花が喋ってるかって?
あんた、そんな野暮な事、聞くんじゃないわよ!
なんか知らないけど、喋れって言われたから仕方なく喋ってやってんだから、ありがたく思いなさいよ。
まったく、もぉ。
えっと、何を話せば良いんだっけ?
あっ、そうそう、龍一郎と薫の事だったわね。
あの二人との付き合いは、結構古いわよ。
たぶん、25年くらい前?
ハッキリ覚えてないけど、たぶんそのくらいよ。
龍一郎の母親が花屋でアタシを買ったはイイけど、持って帰って、アタシが鳴子百合じゃないって分かった途端、いきなりブーブー言っちゃって。
まったく失礼しちゃうわ。
アマドコロってフダ付けて売ってたのに、見てない方が悪いと思わない??
よくあるのよ、ホント。
なんで間違えるのかしら?不思議だわぁ。
まぁ、もう、慣れちゃったからどうでもいいんだけど…。
で、何の話だっけ?
そうそう、龍一郎と薫の事だったわね。
龍一郎がね、母親にアタシをくれって言うから「この子に育てられるのかしら?」ってちょっと心配になったのよ。
だって、出来ればちゃんと育ててほしいじゃない?
ガキんちょにアタシがちゃんと育てられるなんて思ってないし、はっきり言って「あぁ、枯れちゃうの?アタシ…」とか思ってたの。
そしたら、包帯グルグル巻きの薫に渡すのよ、このアタシを!
でもね、薫ったら、怪我だらけの腕で、嬉しそうにアタシを抱えてちゃって…。
ちょっと包帯が汚れちゃっても気にしてないみたいだったわ。
ほら、アタシの花言葉って「元気になって」なのよぉ!イイ言葉でしょ?
どうやら龍一郎はそれが伝えたかったみたいね。
薫ったら嬉しそうに笑っちゃってさ。
それが、アタシと二人との出会いだったわ。
でもさぁ、薫もガキんちょに変わりないでしょ?
アタシは「あぁ、人生終わった…」って思ってたんだけど、薫はアタシを丁寧に育ててくれたわ。
植物図鑑とか、そのテの本を読んでは、私に「キレイに育って」って言いながらお水をくれるの。
「イイ子に当たってよかったわぁ」って思ったの。
それから毎日、朝夕と水を私に掛けながら、その日に起こった事を話してくれるの。
学校で起こった事、勉強した事、外に出掛けた事。
でも、一番多かったのは龍一郎の事だったわ。
その時、私は「ああ、この子は龍一郎に恋をしてるのね…」って思ったの。
龍一郎の事を話す薫ったら、とても嬉しそうで、とてもキラキラしてたんですもの。
こっちが中てられちゃうわよ、ホント。
アタシも丁寧に手入れをしてもらって、穏やかな日々が続いたの。
薫はとてもイイ子で、アタシに少し元気がなくなると、本で調べたり、近くの花屋まで連れて行って看病してくれたり…。
あの子にとってアタシは、龍一郎そのものだったよね…。
だから、凄く大切にしてくれたんだと思うわ。
でもね、あれは、薫が高校の時かしら?
モノ凄く悲しそうな顔で部屋に入ってきたから、ビックリしたわ。
そしたら「龍一郎様が、名前で呼んでくれなくなった」って…。
別に聞いてないわよ、花に口はないから…。
でも、アタシの声が届いたみたいに、薫はポツリとそう言ったの。
それはそれは悲しい顔をしていたわ。
あと「龍一郎様に好きな人が出来たらしい」とか…。
あれだけキラキラした顔で話してたのに、それ以来、龍一郎の話をする薫が苦しそうでね。
不毛な恋なのかしら?
なんせ、花のアタシに、人の恋路の難しさはわからないから…。
大学を卒業する頃には、薫から龍一郎の話を聞く事も無くなったわ。
溜息ばっかり吐いちゃって「そんなに溜息ばっかり吐いてたら幸せが逃げちゃうわよ〜」ってくらいにね。
でも、時々、口から漏れる様に龍一郎の名をつぶやく事があったの。
思い続けるという試練を自らに科したのかしらね?
思い詰めた顔でアタシを見る事が増えて行ったわ。
薫が辛そうな顔でアタシに「龍一郎様」って言うのが、ホントに可哀想で…。
でも、ほら、アタシ、花じゃない?
何もしてあげられないのよぉ、なんせ花だから…。
でね、あれは、薫が社会人二年目の頃だったわ、すごい勢いで部屋に入ってきたと思ったら、泣き崩れたの。
もう、ビックリしちゃった。
え?なに?なにがあったの??ってなるじゃない?
しかも、声を押し殺しながら泣いてるの、あの子。
しばらくして泣きやんで、何もなかったように過ごしてたんだけど、それって逆に心配になるじゃない?
勿論、朝夕の水やりはしてくれるんだけど、ふと薫を見るとポタポタって涙を流しながら私に水を掛けるの。
もう、ホント壊れちゃうじゃないかって心配したわ。
それで、しばらくしたある日、薫は、龍一郎の部屋にアタシを連れて行ったの。
直前まで泣きそうな顔してたのに、龍一郎の前に立つ薫は無感情って言葉が似合う感じだったわ。
小さい頃は楽しそうに笑ってたのに…。
大人になると余計なオプションが付いちゃうのかしら?
アタシ、悲しくなっちゃったわ。
あと、龍一郎は何も知らなかったみたいね。
一人暮らしするって言ったら、龍一郎が慌てた顔してたし、お世話になりましたって深々とお辞儀をする薫をみて、固まってたし。
初耳だったのね、龍一郎。
アタシは、ちょっと前から荷物とかまとめてたから一人暮らしするのは知ってたけど…。
薫は『返します』ってアタシを龍一郎に渡して出て行ったんだけど、龍一郎はポカーンって感じだったわ。
そうそう!アタシの事も忘れてたのよ!
こんなに美しくて凛々しいアタシを!!
もう、失礼しちゃうわ!怒っちゃう!!プンプン!!
って、怒ってみたけど、薫の事を思うと、そんな気持ちもスグに醒めたわ。
あの子がアタシを龍一郎に返した意味をアタシはハッキリと知る事ができなかった。
薫が言葉にして"龍一郎が好き"って言ったわけじゃないしね…。
龍一郎の方と言えば、アタシを持ってリビングに降りた時に思い出したのね、アタシの事。
慌てて薫を追いかけて行ったわ。
リビングには、アタシをブーブー言った龍一郎の母親が居て…。
最初は、あのババァとか思っちゃったけど、薫に会えたから感謝してやらなくもないわ。
まぁ、相変わらずアタシを鳴子百合だと思ってたのには、ちょっとムカっとしたけどね!
それで数日経って、薫が迎えに来たの。
表情は明るかったわ。
優しそうに微笑んでくれたし。
で、どこに行くのかな?って思ったら、新しい薫の家だったわ。
あら?仲直りしたの?とか思ってたら、それ以上の発展があったみたいね。
日が増すごとにイチャイチャしちゃって…。
あー、アツいアツい。
ホント、バカップルってこの事ね。
アタシの定位置がリビングでよかったわ。
寝室なら熱が出ちゃうところだったわ、ホント。
人目が無いからって、そこらへんでチュッチュしちゃって。
人目は無くても花目はあるのにね!まったく、もぉ!
そんなこんなで時が流れて、現在。
ん?私は相変わらず薫の家か?って?
残念。
薫の家でも、龍一郎の家でもないわ。
今の私の現在地は、丸川書店専務執務室。
今日も瑞々しい葉と、美しく可憐な花を咲かせて、二人を癒してあげてるわ。
って、言いたいけど、アタシの事なんてOUT of 眼中!
完全スル―なんだけどね!
龍一郎がこっちをチラチラ見てるなぁ?って思ったら、アタシの隣に居る薫ばっかり見てるし、薫が見てるなぁ〜とか思ったら、アタシ越しに龍一郎を見てるし。
まぁ、別に、アタシはちゃんと世話さえしてくれればいいのよ。
その点、ココは快適よ。
平日は、薫が面倒見てくれるし、薫が居ない時は、廊下に出されて、そこで待ってたら専門の業者が手入れしに来てくれるし。
おかげで、帰りの遅い薫を待ってた頃よりピチピチよ。
って思ったら、またイチャイチャし始めた…。
あんた達、ちゃんと仕事しないさいよ、まったく…。
「専務、先程から視線を感じるのですが…」
「ん?なに?自分の所有物を見ちゃいけないのか?」
「見るのは構いませんが、手が止まってますよ」
「"所有物"って所は、突っ込まないのか?」
「…?」
「なんだよ?」
「…ぃぇ…」
「言いたい事があるなら、ハッキリ言えよ」
「…では…」
「ん?」
「突っ込まれるのは貴方の方だと思いますが?」
「…っ!」
ああ、ナニ?このバカップル!
こういう時、何て言うんだっけ?
あー、そうそう。
“リア充爆発しろ!!”だ。
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す、すみません。
あさいさ記念サイトさんに投稿した作品があまりにも暗くて、その反動で書いたモノです。
クスっと笑って頂ければ、これ幸い。