CHERRY BLOSSOM FRONT@ | ナノ


2012-04-05


 元々、花見ネタを書き始めてたんやけど、シエル5月号を読んで、急遽書き直し!
 シエル5月号ネタばれ含みます。
 半分以上は、花見に関係ございません!!
 ん?オチ?なにそれオイシイの?
 タイトルはラーメンズの公演名より拝借。


+++


「ちゅーもーく!」

 井坂龍一郎は、編集部の真ん中でワガママを叫んだ。

「明日の夜、お花見会をするので参加するよーに!」

 龍一郎に見付かった高野は、少々嫌な顔を見せる。

「おー、高野、丁度よかった」

 しかし、そんなエメ編編集長の顔色など、専務取締役の龍一郎にとって何の障害でもない。

「エメラルド編集部員は強制参加な」

 高野が、何か聞き返しているようだが、そんな物は無視だ。

「店とか好きに決めていーから、人数50人位でよろしくなー」

 誘って断る奴がいるなら、それは丸川の社員にあらず!
 何があっても来る!それが上司命令!
 まぁ、親戚の冠婚葬祭くらいは大目て見てやろう…。
 もし、断るとすれば自分の父親くらい…いや、あと一人いるか…。

 落としの井坂が落とせない相手…。

「じゃ!」

 龍一郎はザワザワする編集部を後にして、エレベーターに乗り込む。
 すると、さっきまで面の様に付けていた笑顔は、一瞬にして不機嫌になった。


 執務室の扉を乱暴に開けて、座り心地の良い椅子に腰を掛けると、ドカリと靴も脱がぬままに、机上に足を放り出す。

「明日、会社の奴らと呑みに行くから」

 目の前に居る秘書にそう言ったが、龍一郎の思った通り、眉一つ動かさず「ハイ、わかりました」と答えると、また業務に戻った。

(俺のイライラはお前のせいってわかってんのか?)



 それは1時間ほど前の出来事…。

「はぁ?明日ってお前…」
「はい、申し訳ありません」

 会議から戻ってきた龍一郎は、朝比奈の口から「明日、終業後、旦那様の行かれる会食にお供することになりました」と告げられたのだ。

「明日は、俺と飯食う約束だろ!」

 そう、明日はデートの約束だった。
 人気のイタリアンレストラン。
 日本庭園を見ながら座敷でイタリアンを楽しむ事ができ、夏は涼しげな虫の音、秋は紅葉、冬は雪見障子から見る澄んだ景色、そして、春は桜のライトアップ…。
 庭園に向けられた部屋が2つしかないため、一日限定2組という隠れ家的レストランで、どんな政治家や著名人が頼み倒しても、オーナーは「先着順ですので」と断るらしく、色々なパイプを持つ龍一郎でも、一般人と同じように電話を掛け、やっと確保したのだ。
 勿論、電話をしたのは朝比奈だが…。

 いや、この際、そんな事はどうでもいい。
 昨日まで「明日は綺麗な桜が愛でられそうですね」などと、言っていた口が「旦那様と会食」と言ったのだ。
 龍一郎の機嫌は一気に急降下する。

 ただ、もう付き合って10年以上経つ。
 ココで何を言っても朝比奈に「旦那様がおっしゃっているので」と、押し切られる事くらい龍一郎も分かっている。
 駄々を捏ねた所で、結果が変わらないのであれば、朝比奈とは違う誰かと予約を実行すればいい。

「予約はキャンセルしておきました」

 しかし、有能な秘書は、龍一郎と自分以外の誰かが、そこに行く事を良しとしないらしい…。

「そうかよ…仕事が早いな」

 嫌味を言った口は不機嫌に歪む。

「今日は、仕事しねーから」
「仕事をしないで困るのは貴方でしょ」
「明日は残業かもな」
「貴方が、故意に残業なさるような不経済な方でない事は、重々承知しております」

 "イライラ"と言う擬音が聞こえそうな龍一郎は、ドスドスと足を踏み鳴らしながら、執務室を出て、エレベーターホールへ向かった。


 この時点では、丸川書店(専務取締役執務室+修羅場中の編集部以外)は、至って平和であった。

 勿論、この十数分後、各部署で「ちゅーもーく!」と、龍一郎が叫ぶ事を、まだ誰も知らない…。


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