2012-03-21
pixivで拝見した、たまひよさんの純ミスのイラストから派生。
素敵なイラストはこちらの16ページ目。
掲載に際して、お名前使用の許可を頂きました。
ご理解とご協力、改めてありがとうございます。
ちょっとムラムラする龍一郎を書こうと思ってみた…。
途中のpassゾーンを飛ばしても読める感じです…。
+++
首元にある窮屈な拘束を少し解くと、襟元のボタンを一つ外し、伸びをする。
目の前には、持ち帰った仕事…。
皺の出来たワイシャツが、今日の疲れを象徴していた。
【彼がジャケットを脱いだら…】
湯上りの龍一郎が見たのは朝比奈の背中。
リビングの隅に作った、書斎と呼ぶには頼りない机の上で店を広げていた朝比奈は、凝った首をストレッチするようにグルりと回す。
その背後から、シャボンの香りに包まれた龍一郎が手を掛る。
龍一郎が見る、朝比奈の背中は龍一郎より少し広くて、疲れた様子は執務室で見る朝比奈よりセクシーだ。
胸の前で組まれた腕はほんのりと桃色に色づいて、体温は朝比奈より高い。
耳郭を甘噛みし、クチュとワザとらしく音を立てて「なぁ、かをる…」と吐息を洩らしながら、朝比奈の胸板を撫で下す掌に、ゴクリと朝比奈は喉を鳴らした。
龍一郎は、時折こうして、朝比奈の仕事の邪魔をする。
(今日だって、龍一郎様が仕事中に我がままさえ言わなければ、終わっていたのに…。)
朝比奈がそんなことを思いながら、柔らかな拘束を優しく解き、クルリと安物のオフィスチェアーを回転させると、腰にタオルを巻いた湯上りの龍一郎にドキっと心臓が跳ねた。
「なぁ?かをる…」
そう言いながら、朝比奈の腿の間の座面に片膝を突き、肩に腕を回しその身を寄せる。
朝比奈の目の前には、自分より薄く白い胸板と、絞まったウエスト、その下は白いタオルが巻かれた腰。
それは、健気に龍一郎の細い腰を守っているが、きっと少し触れればその結び目は簡単になくなってしまうだろう。
チャイナドレスの裾の様に二つに分かれた布の隙間から、朝比奈の股間を狙う様に差し出された龍一郎の太腿は、日に焼けておらず、程よく筋肉質で、触ればしっとりと手に吸いつくことを朝比奈は知っている。
なぜなら「なんか乾燥する」と龍一郎が言った独り言を聞き逃すはずもない朝比奈が、入浴剤や柔らかなボディータオル、保湿ミストなどを常備し、龍一郎も「面倒だ」などと言いつつ、自分の身体を愛してくれる恋人の為に、せっせと身体を磨いたりしているとか、いないとか…。
そんな、きめ細かい肌に朝比奈の理性は一瞬、引き込まれるが、見上げた龍一郎の首に張り付く黒い毛先が気になった。
そして、溜息混じりに朝比奈は、『全く貴方と言う人は、心配するこっちの身にもなって頂きたい…』などと思うのだが、この時点で朝比奈はある種のトラップにハマっていたのかもしれない…。
「龍一郎様、このままでは風邪をひきますよ。
ドライヤー……んっ…」
近づいてきた唇は、朝比奈の忠告を塞いで、一端離れると、上唇を舐め、下唇を口に含み、優しく愛撫し始める。
肩に置かれた龍一郎の手が、首を撫でるようにして頬に辿り着くと、愛しそうに両顎のラインを確認するように何度か小指で擦った。
「あっ…ふっ…ん」
最初は控え目だった唇は、朝比奈の呼吸を奪う様に激しくなり、差し出された舌を朝比奈は口腔内に迎い入れてしまう。
「んっ…っ…」
口元から水音がして、鼻からどちらか分からない息が漏れる。
“チュッ”っとリップ音を立てて離れた唇が、ゆっくりと動く。
「なぁ、かをる。…したぃ…」
そんな事を言われれば、頑丈な理性の仮面を完璧に被った人間でも、妖艶な声と吐息に、腰に持った熱を隠しきれない。
「…龍、一郎様」
「仕事は終わりだ」
そう言うと、龍一郎は、朝比奈の背後にあるノートパソコンをパタリと閉じて、再び朝比奈の頬や耳の形を確認するように、優しく撫でる。
しかし、朝比奈は、龍一郎の湯冷めを心配して「龍一郎様!」と強(したた)かに名を呼び、その手をやんわりと突き返した。
朝比奈とて、龍一郎を抱きたくないわけではない。
ただ、龍一郎の身体を気遣う事が最優先で、自分の気持ちなどは二の次なのだ。
手を突き返され、椅子から一歩下がった龍一郎は、朝比奈から目を逸らす。
「わかった…、邪魔したな…」
少し弱い声色に朝比奈の胸がズキリと痛む。
踵を返した龍一郎の背中を見て、自分の出した回答が、龍一郎と自分にとっての正解かどうかを考えた。
朝比奈が思う正解は、専務と秘書という主従関係の正解であって、恋人という特別な関係での正解ではないのではないか…。
そう思った瞬間、朝比奈の身体は動いていた。
勢い良く立ちあがったせいで、オフィスチェアーが机にぶつかり、その反動で、机上のマーカーペンや資料が、バラバラと音を立てて落ちたが、朝比奈の意中には入らない。
その視線は、廊下へと続くドアの前にいる龍一郎を捉える。
背後の音に驚き振り向いた龍一郎の腕を引っ張って寝室に連れ込み、ベッドの前でキスをして、優しくマットレスに倒すと、目下で微笑む龍一郎の唇が、音を出さずに自分の名を呼んだのが、そのほの暗さの中でも解った。
龍一郎は朝比奈の首にそっと手を伸ばす。
男の割に細く白い龍一郎の指先が、中途半端に緩められたノットに引っかかると、耳に入る化繊独特の擦れ合った音。
朝比奈は、早く素肌を合わせたいと、自らワイシャツのボタンを外し始めた。
が、龍一郎に阻まれ、下から右肩を押されたかと思うと、天地が入れ替り、朝比奈は龍一郎に組敷かれる。
「龍一郎様??」
「お前さ…人前で…」
「はい…」
「…なんでもない」
朝比奈の腿に乗った龍一郎は、その見下ろす男の頬を愛しそうに撫で、唇を合わせ、一旦離すと、上唇をチュッと吸って、舌先で愛撫し始めた。
朝比奈は『さっき言いかけた事は一体何だったんだろう』と思ってはみたが、龍一郎の優しい愛撫に徐々にその思いも薄れていく。
壁に掛かった時計は、午後九時。
手付かずの仕事は明日に持ち越す事なりそうだ…と、朝比奈は、龍一郎のまだ水分の残る髪を撫でた。
+++
【Aのパス】
なに?朝比奈が浮気?
龍一郎様が向かった先は?
○○○さんの家。
※漢字じゃないよ。
pass有りを飛ばす方は→こちら
<< >>