2012-02-25
途中でpass有。
オリキャラあり。
pass部分(4番目)を飛ばしても読めます★
passに関しては、aboutを御一読下さい。
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一人読書に耽っていると、聞き慣れた着信音が耳に入ってきた。
集中していたせいか、少しドキリと心臓が鳴ってしまったのは気のせいにして、朝比奈は閉じたハードカバーを一つ撫で、ローテーブルに置いていた携帯と続きの気になる物語を持ち替えた。
「はい、朝比奈」
『あっ。朝比奈さんですか?』
「…どちら様、でしょうか?」
ディスプレイに表示された名前は、井坂龍一郎。
だが、電話口は龍一郎と別人。
一瞬、背中に嫌な汗を掻く。
仮にも大企業の次期社長だ、一般人より危ない事に巻き込まれるリスクは高い。
『あっ、俺、大学時代の友人で、橋本って言います。龍一郎が、朝比奈さんを呼んで欲しいって…』
無意識に怪訝な返答をしてしまった朝比奈を察して、先方が名乗って来た事によって、朝比奈の背は常温に戻った。
「失礼いたしました。
橋本様のお話は井坂を通して伺っております。
ご結婚されたそうで、おめでとうございます」
『あっ、すみません…。ありがとうございます』
電話口で橋本と名乗った男は、龍一郎の大学の友人である。
直接面識は無いが、龍一郎の口から何度か名を聞いたことがあり、この度、付き合っていた彼女と結婚することになったそうだ。
そして、今晩、身内だけで祝賀会をするという事で、龍一郎は出掛けて行ったのだ。
「そちらに伺いたいのですが、井坂から場所を詳しく聞いておりませんので、大変申し訳ございませんが、場所をお教え頂けますか?」
『あっ、えっと、結構わかりにくい所なんですが…』
橋本が住所を伝える声の後ろから「あーさーひーなー」と酒臭のする騒音が聞こえ、朝比奈は電話を切るなり、溜息をついた。
スーツに着替えるべきか一応悩んでみたが『そんな事より、荷物回収が優先だ』と、車の鍵を掴んで玄関扉を開けた。
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