小さな首輪@ | ナノ


2012-02-18


なんとなくバレンタインに便乗して、書いてみた。


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 部決会議が終わり、ブラブラと社内を散歩していると、聞きたくもない話を耳にしたりする。

「秘書室の朝比奈さんってフリーなのかな?」
「いきなり、なによ…」

 女という生き物は、このテの話が好きらしく、コソコソと話しているつもりなのか、わざと聞こえるように話しているのか知らないが、自販機の影で姿の見えない女共の話の尻尾を何故か掴んでしまった俺は、そのジーっと唸る大きな箱の横で「またか…」と思いながら溜息と吐いた。

 朝比奈の名が女子社員の口から聞こえた事は過去にもある。
 と、言うより、年を追う毎に増えている気がする。

「今度、誘ってみようかな?てか、バレンタインにアタック!」
「でも、アンタ、コネとかないでしょ?」
「それがさぁ、文芸の山本さんって、大学の先輩なんだよねぇ」
「山本さんって、朝比奈さんの同期だっけ?」
「中途採用だからほぼ同期?いや、朝比奈さんよりちょっと遅かったか?でも、年は先輩の方が2コ上かな?」
「へぇ〜、そうなの」
「あっ、それでさぁ」

 少しずつ、遠ざかる声に、自分とは違う出入り口からその場を去ったのだと思い、影から一歩踏み出して、その後ろ姿を見た。
 制服を着ているから、現場ではなく、内勤のようだ…。

 まぁ、今更、焦る事なんてない。朝比奈は、俺のモノだし。
 朝比奈が、俺以外を選ぶなんてありえない。

 だが、朝比奈にちょっかい出そうと思っている奴がいるだけで、ムカつく。


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