[-良き夢を-[2]
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バーナビー Side




生まれて初めて、人に好きだと伝えた。
僕と一緒にいてほしい、と。

そんなことを言うつもりはなかった。
誰かと付き合ったり、ずっと一緒にいたり。
きっと僕には出来ないと思っていた。
またいつか失うかもしれないと恐怖に怯えるなら、もう大切なものなんていらないと。
そう決めていたのに。

ナマエさんは、そんな僕にありのままの笑顔をくれた。
明るく優しく、僕のために怒って僕のために手を振ってくれた。

初めて、人を好きになった。
初めて、その人のことを知りたいと思った。
僕を見てほしいと思った。
ナマエさんを、欲しいと思ったのだ。
それを伝える勇気が、なかなか持てなくて。
そんな僕の背中を、虎徹さんが押してくれた。
怖くない、と。

だから彼女に、好きだと言えた。
果たしてそれは、ナマエさんにとって迷惑な気持ちだったのだろうか。

あの夜ナマエさんは、バニーちゃんにはもっといい子がいると笑って。
僕を置いて帰ってしまった。
その時の笑顔は、どこか違和感があって。
寂しそうだったような、つらそうだったような。
それを見たとき、急激に後悔が押し寄せてきた。
好きだなんて、言わなければよかったと。
ナマエさんに嫌な思いをさせたかったわけじゃないのに。
やっぱり上手くいかないと落胆して。
その背中を見送ることしか出来なかった。


結局一睡も出来ないまま夜を越し、今日になって。
僕はナマエさんに会うのが怖かった。
何を言われるのか、どんな顔をされるのか分からなかったから。
いつもみたいに笑って話してくれなかったらどうしよう。
気まずそうに視線を逸らされたらどうしよう。
そう思うと、怖くて足が竦んだ。

それだけナマエさんは僕の毎日に大きな影響を与えてくれていたんだと気づいて。
ナマエさんに喜んでほしいとか、ナマエさんと話したいとか。
彼女がいなければ知らなかった感情がたくさんあって。
このままには出来ないと思った。

ナマエさんの特別が欲しかったけど。
今までの日常を失うのなら、そんなものはいらない。
ナマエさんが嫌な思いをするのなら、僕が我慢すればいい。

だから、もう1度ちゃんと話そう。
昨日のことは忘れて下さいと。
そう言って、また今まで通りに戻ればいい。

だから僕は今、ナマエさんの自宅マンションの下で彼女の帰りを待っている。


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