Y-まだ明けない-[2]
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「まあまあ、あれも仕事のうちですよ」

今日の取材でも完璧な営業スマイルを披露していたバニーが、俺を宥めるように苦笑する。

「俺はもっとさ、現場に出てばーっと活躍したい訳よ」

分かる?とバニーを見上げた。

「もちろん分かりますけどね。まあ、この騒ぎも今のうちですよ」

やがては鎮まると、バニーはそう言った。

「それに、僕は結構楽しんでますよ」

バニーがくすくすと笑うから。

「…それにしちゃ、ずいぶん浮かない顔してんのな」

少しだけ、核心へと歩を進めてみた。

「…どういう意味です?」

バニーが不思議そうに首を傾げる。

「そのまんまの意味だろーよ。最近元気ないな、どうかしたか?」

最初はいけ好かない奴だと思っていたのに。
いつの間にか、こんなに心配するようになってしまった。

「そんなことないですよ。気のせいじゃないですか?」

だから、分かるようになった。
バニーが頑なに否定するときは、図星なんだと。

「なーに悩んじゃってんだよ。ほら、おじさんに相談してみろって」

空いたグラスにワインを注いでやる。
こういう時、アルコールの力は偉大だ。

「だから別に悩んでないですって」

全く、強情っ張りめ。

「言えよ。なんだ?恋の悩みか?」

それはあてずっぽうに、ただからかって軽い空気を作ってやろうとしただけの言葉だったのに。
バニーが突然、目に見えて顔を真っ赤にした。
これはアルコールのせいなんかじゃない。

びくり、と揺れた肩。

「…え、当たり?」

恐る恐る尋ねれば。

「〜〜っ、だから言いたくなかったんですっ!」

全力で肯定された。

驚いたなんてもんじゃない。
恋愛絡みだけはありえないと思って聞いたのに。

「えっちょっ、おじさん聞いてないよ!?誰!?」

バニーが誰かを好きになったとか、付き合ってるとか。
そういった話は、過去の出来事を含めたって1度も聞いたことがなくて。
仇討ちしか頭になかったんだから当然かと、あまり気にしたことはなかった。
確かに顔とスタイルはいいが、性格に難ありだしなとか。
そんなことを思っていた。

バニー自身、恋愛事には興味なしってかんじだったから。
だからもう、これは大スクープだ。
驚愕の新事実発覚ってやつだ。

「別に誰だっていいでしょう」

答えることを拒んでおきながら、誰かを好きなことは否定しない。

俺は頭の中で、身の回りの女性陣を思い浮かべた。
カリーナ、パオリン、アニエス、ネイサン…は違う。

いや、もしかして。

「ナマエ、か?」

腐れ縁の女の名前を口にすると。

「…っ」

バニーは大きく目を見開いて、息を飲んだ。


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