Y-まだ明けない-[1]
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虎徹side



「バニー、今から飲まないか?」

最近、バニーちゃんの元気がない。
体調が悪そうとか、そういうんじゃなくて。
こう、どこかぼーっとしてるというか、寂しそうというか。
上手く言えないけど、そんなかんじだ。

ジェイクを倒した直後、バニーは憑き物が落ちたようにすっきりした顔で。
毎日楽しそうだったから、ようやくこいつも幸せになれるのかな、なんて喜んだのに。
一体どうして、また落ち込んでいるのだろう。
色々考えて、俺は1つの仮説に辿り着いた。
もしかしたらバニーは、目的を失ってしまったのではないだろうか、と。

両親の仇を討つ、ウロボロスを追う。
ひたすらそれだけを考えて生きてきたバニー。
決着が着いて目的が達成されて、今まで追い求めてきたものが突然なくなって。
何をしていいか、分からなくなったのではないだろうか。
こう言っちゃなんだが、ウロボロスは皮肉にも、バニーが生きる理由になっていたのだ。
もうそれを追う必要がない今、何のために生きればいいのか分からなくなって空虚さを感じているのだろうか。

せっかくここまで来たのに、そんなのはあんまりだ。
バニーは、幸せにならなきゃいけない。

まずは元気づけて、話を聞いてやろうと。
仕事帰りに飲みに誘えば、バニーは仕方ないみたいな顔をしながらも頷いた。
相変わらず素直じゃない奴だ。

バニーが気兼ねなくリラックスできるようにと、バニーの家で飲むことにした。


帰り道、スーパーで適当にツマミを買い込んで、もうすっかり行き慣れた高級マンションへ。
いつ来ても、物が少ない部屋だ。

バニーがキッチンから酒を引っ張り出して来る。
俺の分のビールと、自分の分のワイン。
あとはツマミの封を開ければ完璧だ。
無駄に広い部屋の地べたに胡坐をかいて座り込む。

「やっぱ仕事終わりのビールはいいなあ」

缶をそのまま傾けて、渇いた喉を潤した。
バニーはカウチに座って、優雅にワインを飲んでいる。
その表情は、多分楽しそうで。
最近元気がないと感じたのは、俺の思い過ごしだったのだろうかとも考えた。

「それにしても、今日のインタビュー、なんだろなアレ」

最近増えた、雑誌のインタビューやら広告の撮影やら。
明らかにヒーローの仕事じゃないと文句を言いたくなるスケジュールが増えて。
今日のインタビューも、やたらと私生活について根掘り葉掘り聞かれ。
アイドルじゃないんだと怒りたくなった。


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