いま、笑って祝福を[2]
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高校時代、剣道部にこの面々が集った。
大学は、同じ奴もいれば違う奴もいて。
全員が社会人となった今、同じ会社に勤めてる奴は誰もいない。
だがこうして、一週間に一回。
毎週金曜日の夜は、この新八の飲み屋に集まるのが暗黙の了解。

勿論、毎回全員参加ってえ訳じゃない。
それぞれ仕事の都合もあるし、各々の付き合いもある。
それでもなんだかんだ、集合時間も解散時間も、予めのスケジュール調整もないこの適当な飲み会に、全員がほぼ毎週参加している。

「いやあ、やっと帰って来たかナマエ」
「やっとって、たったの一ヶ月だよ?」
「いやいや、毎週野郎だけで顔付き合わせてみろよ。長かったぜえ」
「ほんとにね。それにもう一君の機嫌が悪くって」
「っ、総司!」
「?、何かあったの?」
「い、いや、何もない。気にするな」
「素直になればいいのに。君がいなくて寂しかったって」
「あ、あんたはっ!少し黙れ!」

もう何年も、見慣れた光景だ。
斎藤の気持ちなんて、とっくに全員が気付いていて。
新八や原田なんかは、まるで兄のような心境なのか少し複雑そうに、だがどこぞの変な男よりは斎藤とくっ付いた方がいいと何かと協力的だ。
そして総司はと言うと、これをネタに延々と斎藤を揶揄って遊んでやがる。
こんなやりとりを、もう云年も繰り返してるってえのに。

「私も、みんなに会えなくて寂しかったよ」

全く何も気付かないこいつは、多分罪作りな女って奴だ。

「…あ、ああ、そうだな」

さっきまで真っ赤になって総司を怒鳴りつけていた斎藤が、今度は打って変わって沈んだ声を出す。
総司なんかは腹を抱えて爆笑してやがる。
つくづくいい性格だ。
他の面々は、流石に斎藤が可哀想に思えて苦笑気味だ。

だが俺たち全員が、こいつのそんなところに惹かれたのも事実だった。
手前で言うのもなんだが、揃いも揃って顔がいいもんだから、どいつも見た目で判断されて女に付き纏われた。
原田なんかは上手くそれを楽しんでいたみたいだが、それでもやはりなかなか心を開ける女というのには巡り会えなかった。
誰も彼も外面を見て、そのイメージ通りの行動を俺たちに要求し、決して中身を見ようとはしない。
俺や原田なんかはともかくとして、純な斎藤や平助なんかは、それらをひどく疎ましく感じていたようだった。

そんな時に、こいつは現れたのだ。
多分こいつは、俺たちの顔がどんなもんだって気にしない。
驚くほど純粋で真っ直ぐで、まあそれが玉に瑕なんだが、それでも全部許せちまうような、無邪気な笑顔。
俺たちは皆、こいつに救われた。


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