始まりの朝[3]
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「…おま、いつから、起きて…」

背を向けて眠っていたはずのミョウジが、いつの間にかしっかり目を開けて俺の方を見ていた。
口元を手で押さえている。
さっき笑ったのはやはりこいつらしい。

「すみません、笑うつもりはなかったんですけど」

そう言いながらも、その声は明らかに楽しそうな色を含んでいる。
一体何が可笑しいのかと訝しんだ俺は、しかし次の言葉に絶句した。

「土方さん、全部口に出てましたよ」

そう言ってミョウジは、もう一度可笑しそうに笑った。
その意味に気付いた瞬間、俺は羞恥心で死ねると思った。
今この場所から一瞬で消えることが出来るなら、財布の一つや二つくらい惜しくないとも思った。
だが残念なことに、そう上手くはいかないのが世の中だ。

「ぜ、んぶ…って、」
「ふふ、全部です」

ちょっと待て。
俺は一体何を言った。
さっきまで何を考えていた。

俺はこいつに惚れていて、他の女に興味がなくなって、こいつを抱きたいと思っていて、だがこんな形でヤりたかったわけではなくて、そもそも昨夜俺は途中で寝ちまったわけで。

「…くっそ、ありえねえ」

もう、項垂れる以外に選択肢があるだろうか。

「なんで俺はお前の前だとちっとも格好つかねえんだ畜生…」

最中に途中で寝たかと思えば、次は無意識のうちに心情を全て暴露しちまったときたもんだ。
情けないにも程がある。

「呆れたろ…悪かったな。俺が喋っちまったことは忘れてくれ。気にすんなって言っても無理かもしれねえが、本当に気にしなくていい」

顔を上げることも出来ず、俺は下半身を覆う布団の一点を見つめながらそう告げた。
全てが終わったと思った。


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