幸せな微睡みを[2]私が眠っているからなのだろう。
羞恥心を取り払った、真っ直ぐな言葉。
向けられる、愛情。
ぎゅう、と抱きしめられて。
ここまでされて目を覚まさないのは逆に不自然かもしれないと思ったが、瞼を持ち上げることはできなかった。
この柔らかな雰囲気が、あまりに心地好くて。
まだ、この甘さに浸っていたくて。
バーニィの髪が頬を擽る。
それでも、気づかない振りを。
「ずっと、俺の傍にいて下さい」
ぽつりと呟かれた、お願い。
もちろん、と心の中で返事をした。
今さらそんなこと、言われなくたってそのつもりだ。
もう2度と、寂しい思いなんてさせてあげない。
嫌になるくらい、一緒にいて。
ずっとずっと、愛をあげよう。
孤独なんて、もう感じなくていいように。
楽しい時も、悲しい時も。
隣りに立っていよう。
嬉しさも苦しみも分け合って、一緒に笑って一緒に泣こう。
最期まで、共に生きよう。
出来ることならば、彼よりも少しだけ長く生きたい。
彼が、悲しむことのないように。
彼の瞳に最期に映るのは、私でありたい。
幸せだったと、そう言って一生を終える姿を看取りたい。
そうしたら、私はきっと満たされる。
それが、最後の役目だ。
そんな、遠い未来を思い描く。
バーニィを残して死んだりはしない、と。
誰にも告げることのない、静かな決意。
こんなにも、生きたいと思わせてくれた。
バーニィに、心の中で感謝する。
「俺は、貴女に出逢うために生まれてきたんです」
そう、耳元で零されて。
思わず微笑んでしまった。
ああ、同じことを考えているんだな、と。
不意に、抱きしめられた身体が浮いて。
バーニィの上に乗る格好になっていた。
ソファの上とは違う、温もりに包まれて。
ほとんど無意識のうちにバーニィの胸に頬を寄せれば、頭上で彼が笑ったのが分かった。
「俺ね、幸せなんですよ」
降ってくる、柔らかい音。
「貴女も、幸せですか?」
うん、幸せだよ。
「貴女の傍に、いられてよかった」
私もだよ、バーニィ。
「こんな可愛い寝顔も見れますし」
…それはちょっと恥ずかしい。
「俺以外には、見せないで下さいね」
分かってるって、ヤキモチ焼きだなあ。
「絶対ですよ」
はいはい、約束ね。
きっと、きっと伝わっている。
「おやすみなさい、ナマエ」
そっと、硝子細工に触れるみたいに優しく頭を撫でられて。
おやすみ、バーニィ。
声には出さずに、そう返す。
どうかいい夢を、と願った。
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