信じる者の幸福[2]メンテナンスルームには、常に2人のバイタルサインを表示しているモニターがある。
いつもは波打っているはずのラインが、今は全く反応を見せなくて。
爆発により、何か電波妨害になる物質が拡散したのか。
それともスーツの計器類に故障が出たのか。
原因すら分からない。
だが、心臓の鼓動を表すそれがなければ、生死は確認できない。
アニエスに、事実をありのまま告げれば。
「分かったわ」
彼女は画面の中で苦々しい顔をした。
「今日は打ち切りにした方がよさそうね。視聴率が落ち始めるわ」
零された独り言に、ざわり、と胸が騒いだ。
「…アニエス」
確かに状況は分からない。
ここからでは、どうすることもできない。
だけど。
「彼らはヒーローよ。…必ず、戻る」
そう言って、通話を切った。
震える脚は、現場に行きたいと訴える心に応えてくれるだろうけど。
私はここを、動いてはいけない。
私はここで、見届けなければならない。
この戦いの、終末を。
それが、私の仕事なのだ。
ヒーローを信じること。
誰よりも、いつだって。
必ず信じると決めたのだ。
ゆっくりと、椅子に腰を下ろした。
大きく息を吸い込んで、パソコンに向き直る。
何か、何か情報を。
少しでも、バーニィたちの役に立てるように。
キーボードに指を走らせる。
頭の中、必死で2人の姿を思い浮かべる。
やばかったな、全くです。
そう言い合って、苦笑し合う2人を想像しようとする。
それなのに、瞼の裏に映るのは、燃え盛る炎に焼かれるバーニィの姿で。
振り払うように、ぎゅう、と目を閉じた。
大丈夫、そう言い聞かせる。
彼はいつだって、どんな状況からでもちゃんと帰って来てくれた。
私の元に、いつもみたいにちょっと格好付けて。
笑って、帰ってきてくれる。
だから、大丈夫。
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