2人を抱きしめた夜[2]「俺は、貴女の味方です」
もっと、頼ってほしいと思う。
僕の前では、強がらないでほしい。
つらい、寂しい、嫌だ。
そんな感情を、ちゃんと教えてほしい。
助けを求めてほしい。
僕を救ってくれたのも、僕の生きる理由も、僕の光も。
ぜんぶぜんぶ、ナマエなのだから。
彼女にとってもそうでありたい。
「前に言いましたよね。貴女が何を考えていても、全て引っくるめて愛していると」
だからどうか、僕を求めて下さい。
ナマエにとっての、救いでありたい。
疲れたら寄り掛かれる場所でありたい。
「…うん」
腕の中で頷いたナマエを、最後にぎゅう、と抱きしめてから。
「ホットミルクでいいですか?」
そう言って、顔を覗き込めば。
「…うん」
彼女は小さく微笑んだ。
その後、マグカップを両手で包み込んでソファに座った彼女は、ぽつりぽつりと言葉を紡いだ。
仕事で、ミスをした。
僕のヒーロースーツのメンテナンスで、数値を間違えた。
もし気づかずに出動していれば、命に関わったかもしれない。
そんな、致命的なミスだった。
それをした自分が、どうしても許せなくて。
ひどく落ち込んだのだと。
ナマエは教えてくれた。
結果的に、気づいて直して、何もなかったのだからそれでいいでしょう、とは言えなかった。
「私のせいでバーニィに何かあったら、私自分を許せない」
そう呟いたナマエが、僕にはとても愛おしくて、誇らしかった。
「…ありがとう、ございます」
こんなにも、真剣に仕事と向き合うナマエが。
僕のことを、ひたむきに想ってくれることが。
「俺は、幸せ者です」
彼女がいるから、僕はヒーローになれる。
彼女がいるから、戦える。
「話してくれて、ありがとうございます」
ナマエが与えてくれた剣で戦って、必ず打ち勝って。
僕はこの人の元に帰るのだ。
いつだって、いつまでも。
「…もう二度と、こんなミスしない」
決然とした表情で、そう言って。
ナマエは前を見据えた。
「はい、信じています。だから、大丈夫です」
掛け替えのない、最愛の人。
彼女が笑っていられるように、僕はいつだって全力を尽くそう。
その力をくれるのは、彼女なのだ。
彼女がいてこその、バーナビー・ブルックスJr.なのだから。
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