*ボツネタ集 途中まで書いてボツになったネタです、続きは期待しないで下さい。もし万が一続きが気になるネタがありましたら、こっそり教えて下さい。 名前変換機能なし、名前はデフォルト、もしくは変換タグのままです。 |
▼ 薄桜鬼/斎藤 きっかけは、ひどく情けない状況だった。 「大変申し訳ありません。お客様の仰る通りでございます」 半年ほど、前のことだ。 俺の失態をカバーするべく、下げられた頭。 激高した男性客の怒鳴り声は、小一時間ほど続いた。 その間、彼女はずっと姿勢を低くしたままそれを聞いていた。 最終的にルームチャージの全額返金で、事態は何とか収束した。 ホテルマンは絶対に、ノーとは言うな。 必ず別の選択肢を提示しろ。 そう言って、彼女は本気で俺を叱った。 そして最後に、笑った。 「よく耐えたね、お疲れ様」 その笑顔に。 そして、まるで何事もなかったかのように仕事を再開した姿に。 一瞬で、心を奪われたと自覚した。 12月31日。 当然のことながら、ホテルには年末年始の休業などない。 むしろ、特に年末は繁忙期の中でも群を抜いて忙しい。 今年も例年通り、ホテルは全室予約で埋まっていた。 「はい、フロントでございます」 「かしこまりました」 「こんばんは、チェックインでいらっしゃいますか?」 鳴り響く内線。 忙しなく動くスタッフたち。 そして、引っ切りなしに客が訪れるフロント。 時刻は22時を回ったところだった。 この日、俺と彼女は同じローテーションだった。 勤務シフト上では、11時から20時まで、となっている。 だが生憎、定時で退勤出来るような状況ではなかった。 「左之!1016どうなった?」 「大丈夫だ、解決した。斎藤、そっちは?」 「問題ない、総司が直接連絡を取った」 「ん、オッケー。じゃあ、」 「ああ、フロントの応援は俺が行く」 フロントバックを飛び交う指示、モニターに映るロビーは人で溢れ返っている。 「あーーー、もう帰ろっか」 ようやくトラブルを解決し一段落ついたところで、彼女がぐったりと椅子の背に身体を預けた。 「大丈夫でしょうか」 「ん、もういいよ。あとは土方さんに任せよう」 2015/01/07 12:40 |
▼ 薄桜鬼/斎藤 一人、物好きな部下がいる。 「ねえ土方。貴方が飼ってたわんちゃん、あれ、どうにかならないかな」 「はあ?」 タリスカーの入ったグラスを傾けたままそう言えば、隣で土方が眉間に皺を寄せた。 正確には、見たわけではない。 だけど、その表情は容易に察することが出来た。 「なんだその、わんちゃんってのは、」 鸚鵡返しだと分かってはいても、その口から飛び出した顔に似合わない単語に思わず喉が鳴る。 それを誤魔化すように、小さく空咳をした。 「貴方の忠犬くんのこと」 この場に不釣り合いな烏龍茶を飲んでいた土方が、ああ、と納得したように唸った。 「斎藤か」 「ご名答」 元々、土方の部署だった。 その土方が新しく立ち上がった部署を率いることになり、後任として私が選ばれた。 鬼の土方部長だなんて恐れられていた彼の後任が女と分かり、当初、部署の社員たちは喜んでいたらしいけれど。 今では、その鬼の土方よりも恐ろしい女、というレッテルを貼られている。 生憎私は、肝心なところで情に流される土方みたいに甘くはない。 「斎藤がどうしたって?」 当初、後任が女だなんてラッキーだと大歓迎ムードだった部署内で唯一、明らかに私を快く思っていないと分かる子がいた。 斎藤一。 土方が右腕にしていた子だ。 彼の土方に対する盲信っぷりは社内でも有名だったから、別に意外ではなかった。 私に反感を持つのも別に構わないと、放っておいた。 「どうしたもこうしたも。手放した後も、上手いこと管理しておきなさいよ」 だからしばらくの間、私と斎藤は決して円満な関係ではなかった。 それは、大した問題ではない。 別に私は、会社に仲良しごっこをしに行っているわけではないのだ。 仕事さえしてくれるならば、内心で私のことをどう思っていても構わない。 そう、それが負の感情ならば。 「なんだ、あの斎藤が何かやらかしたってえのか?」 いつからだろう。 彼が私に抱く感情が、負から正へと真逆に反転したのは。 「なぜかね、惚れられちゃいましたよ」 「………あいつ、女の趣味悪ぃな」 「はい、土方の奢り決定」 灰皿に置いてあった吸い差しを奪って唇に咥えれば、土方は小さく舌打ちを漏らした。 「で?それは告白されたってことか?」 「そ。……クリスマスにね」 そう答えれば、土方はもう一本取り出した煙草に火をつけようとしたところで固まった。 「………随分と情緒があるな」 「見倣えば?」 「うるせえよ馬鹿野郎」 ようやく火のついた煙草を深く吸い込んだ土方が、あの斎藤がねえ、と独り言ちる。 私は吸いきった煙草をガラスの灰皿に押し付けた。 「断ったんだろ?」 「そりゃまあ」 「で、諦めてくれねえってんで面倒になったわけか?」 そういうことだ。 一つ頷けば、土方が溜息を吐いた。 「そりゃご愁傷様なこったな。あいつはな、良く言えば粘り強い、悪く言やあしつこいんだ。精々頑張って抵抗しやがれ」 その、全く嬉しくない情報に。 「飼い主の躾がいかに杜撰だったかってことでしょ」 そう吐き捨てたのが、昨日のことだった。 2015/01/07 12:40 |
▼ 薄桜鬼/土方 大事なもんがある。 何があっても、手放せないもんがある。 たとえ、その羽を毟り、鎖で縛り付け、籠の中に閉じ込めることになったとしても。 決して、失えないもんがある。 「ようユア、もう終わりか?」 ユアの肩を叩きながら、そう声をかけた原田を見て。 気安く触れんじゃねえよ、と。 喉の奥で怒鳴り付けた。 実際に、その言葉が音となって口から飛び出すことはなく。 俺はただ、奥歯を強く噛み締めた。 「原田さん、お疲れ様です。もう上がりです」 対して振り返ったユアは、原田に向けて笑顔を見せた。 花が咲き誇るかのような、明るい表情だった。 「そうか、お疲れさん。俺ももう上がりなんだが、一杯どうだ?」 白い歯を見せて笑った原田が、指で円を作って呷る仕草をする。 途端にユアは、眉尻を下げて困った顔をした。 「ごめんなさい、今日はちょっと……」 言葉尻こそ濁されてはいたものの、明らかな拒絶。 原田が苦笑した。 「今日も、か」 原田にしては皮肉げな口調に、ユアはますます申し訳なさそうな顔をする。 その視線こそ俺の方には向かねえが、俺の存在を意識しているのは明らかだった。 「すみません……」 それでもユアは、謝罪の言葉以外口にすることなく。 押し問答を続けても無駄だと悟った原田が溜息を吐くまで、終始伏し目がちに俯いていた。 「ま、これ以上お前を困らるわけにはいかねえな」 やがて、原田は再びユアの肩を軽く叩くと。 じゃあな、と後ろ手を振ってオフィスを出て行った。 その背を見送ったユアが、ゆっくりと俺の方を振り返る。 その表情に、笑みはなかった。 ただ、怯えたような強張りだけがあった。 2014/12/28 13:32 |
▼ 薄桜鬼/土方 「てめえは誰のもんか、分かってんだろうな」 そう言った俺を見て、お前は怯えた顔をした。 そんな顔をさせたかったわけじゃなかった。 ただ、俺の隣で笑っていてほしかった。 その笑った顔を、誰にも渡したくなかった。 俺だけのもんにしたかった。 ただ、それだけだった。 2014/12/28 13:32 |
▼ 薄桜鬼/原田 ラブサプボツ 玉ねぎにじゃがいも、にんじんにブロッコリー。 他にもたくさんの食材を、カゴいっぱいに買い込んだ。 ずっしりと重い袋を二つ抱えて歩く、夕暮れの道。 駅前のツリーはもう、イルミネーションが点灯していて綺麗だった。 手袋越しでも指に食い込む袋の持ち手は少し痛かったけれど、ちっとも嫌じゃなかった。 「25の夜は早く上がれそうなんだ。家に来ねえか?」 左之助さんがそう言ってくれたのは、先週末のことだった。 社会人である左之助さんは、平日は当然お仕事がある。 大学に通っている私も、何だかんだ平日は忙しい。 だから今年のクリスマスは会えないかもしれないと思っていたのに、左之助さんはきちんと時間を作ってくれた。 12月末、きっとお仕事が忙しい時期だと思う。 それなのに、 2014/12/26 09:44 |