どうやら私が見事に乗り遅れた電車は、ポートマフィアの奇襲を受けて与謝野と中島は傷を負いながらも梶井基次郎との戦いに勝ったとのこと。
あの時、電車に乗ろうとする私を引き止めたのは紛れもなく中原で。あの時電車に乗っていたら異能を持たない私は間違いなく足手まとい、死んでいたかもしれない。
与謝野の異能のおかげで傷こそはなかったが服がボロボロな状態で帰ってきた2人ともう1人見知らぬ少女は意識がないようであった。
その後、目を覚ました少女は、泉鏡花という。
夜叉を操る異能を持ち35人殺しの指名手配犯。
情報を得ようとする国木田の問答には反応せず、ただ一言こう言った。
「橘堂の湯豆腐……美味しい」
−−
グツグツと煮えている鍋の中には、絹のような真っ白なお豆腐。
それを無表情で食べて行く鏡花の前で、お品書きを見ながら顔を青くする敦。
「おかわり」
「……ヒィ!!!く、国木田さぁん…」
「俺は払わんぞ」
「まあまあ、敦くん私も少し出すから」
それから、数杯おかわりをした彼女は、満腹になったようで少しずつ話を始めた。
「両親が死んで孤児になった私をポートマフィアが拾った。私の異能力、夜叉白雪を目当てに」
たとえ自分の意思ではなくても、35人殺しの罪からは逃れられない。国木田は、鏡花を軍警に引き渡せと告げた。
「よし、豊崎帰るぞ。書類がたまっている。いいか、敦。お前のボートは1人乗りだ。彼女まで乗せたら共に沈むぞ」
「………でも、だとしたら、太宰さんはなぜ僕を助けてくれたんだ」
歩き始める国木田に慌ててついて行くが、背後で敦が呟いた言葉で足を止めた。
「国木田さん、私もやっぱり放っておけません!」
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