なんだか煩い、と感じて、目を開く。
「………………あれここは?」
「……!!」
「あっ、英李ちゃん、目を覚ましたみたいだね」
太宰の声が上から聞こえて起き上がろうとするが、腕が拘束されているのかうまく起き上がれない。
そこで誰かが横に膝をつき、そっと抱き起こしてくれた。
「あ、りがとうございま…す?って、中原さんじゃないですか」
「あぁ、悪りぃな。どこか痛むところはねぇか?」
「大丈夫です。あ、でも手が動かなくて」
「…あー、ちょっと目を閉じててくれ」
「…?」
言われるがまま目を閉じると、鉄が砕ける音が響いた。驚き目を開けると既に腕は自由になっていた。
「もしかして中原さんも異能力者なんですか?すごい、ありがとうございます」
「いや、少し跡になっちまってるな…ごめんな」
そう言い、優しい手つきで手枷の跡に沿うように手首を撫でる中原は泣きそうに笑った。少しだけ血が滲んでいる。意識し出すと痛み出してきた気がする。
「あのー、お取り込み中悪いけれど、2人はいつ知り合ったんだい?」
「あ、この間太宰さんと見つけたカフェで知り合ったんです。常連さんなんですって」
「へー、ふーん。あそこにね〜」
ニヤニヤと中原を眺める太宰に、すかさず中原は蹴りを喰らわそうとするが、それで身を屈めることで避ける。両手首拘束されていたはずの太宰の腕は何故か自由で、思わず感心した。
「まあ、それはおいおいネタとして取っておくとして、英李ちゃん今の状況を教えてもらってもいいかな?」
「………………あれ?私何してたんだっけ?」
「………」
思い出そうとすると記憶に靄がかかっているかのように思考を邪魔してくる。
「ごめんなさい、湯豆腐を食べたとこまでは覚えているんですけど、」
私は自分の記憶が欠落していることにもこの時はまだ気づかなかったのだ。
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