「 迎えに来たよ、_1 」

**ライラ目線
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 アルスさんは慈愛に満ちた目で、地面に倒れる夫を見下ろしていた。
「残念だったね、キーファ。もう少しだったのにね」
 私の夫、キーファは、親友の手によって、倒された。
 圧倒的な力で以て彼は完敗したのだ。

 8年間もユバールの守り手をやってきた、過去最高の守り手だと謳われた彼が、
 今は、親友の足元でぼろ雑巾のように棄てられていた。
 強い意志に満ちた明朗なる目をし、業火を纏わせる大剣で敵を豪快に薙ぎ払っていた彼は、しかし、過去道をたがえた親友の、足元にも及ばなかったのだ。



title_迎えに来たよ





 主張の違いにより、彼らは戦闘になった。

 アルスさんの「迎えに来たよ」という発言から始まった、今回の戦い。

 なにがなんでも親友を取り戻す、と言うアルスさんと、
 おれには守るべき一族と家族がいるから無理だ、なにがなんでも残る、と主張するキーファ。
 二人の力と力がぶつかり合った。

 いや、彼らは『戦った』というより、私の旦那が『一方的になぶられた』と言ったほうが正しい。
 または、『遊ばれていた』と。

 真剣な表情の夫とは対照的に、アルスさんは、優しげな笑みを崩さなかった。慈愛に満ちた笑み。本当に、愛しいものを見るような目で、生涯の親友を見ていた。
 友愛を越えた、なにか大きな、包み込むような愛。
 母親が幼子を見守るような、純粋で温かな愛。
 そういった穏やかな目で、微笑みながら、全力で向かってくるキーファの攻撃をのらりくらりと避けていた。

 ぜぇはぁと息を荒げるキーファと、全く息を乱さないアルスさん。
 キーファが剣を地面に突き刺し、それに体重をかけ息を整えている間も、アルスさんは可愛い我が子を見るような目で見ていた。

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