「 5 」

 里の暗部は全員動物の面をする(これを暗部面と呼ぶ)が、狐の面をしているのは、里で一人しかいない。

 邪魔するなと怒鳴ろうとしたイビキは、しかし、その狐面に気付いて、驚きに眼を見開いた。
 思わず、声が漏れる。
「暗部総隊長、狐空さま…!!」
 信じられない…!
 伝説とされる、幻の暗部だ。SSクラス任務成功率100%という信じられない噂だけが独り歩きしている。実物を見た者は殆どいないとされており、イビキも今この瞬間彼を初めて見た。憧れの人を見られて、身体が震える。

「よ、」と手を上げこちらに近づいて来たその伝説の暗部は、そのまま馴れ馴れしく裕也の肩を抱いた。
「こいつのごうも…尋問は、俺がやっとくから」
「は?」
「だからお前はお役目オシマイ。」ニコッと面の下で笑ったのが分かる。「じゃ、ごくろうさまでしたー」

 裕也も、頬に殴られた青痣をこさえたままニコリと笑った。
「そうですね、おれも、狐空さんなら大歓迎ですよ。(まあおれはやられるよりやりたい派ですけど)」
「おれは優しくしてやらねぇよ?」
「はっはっは、そいつは怖い」

 そのまま、狐空は、裕也をどこかへ連れて行こうとドアの方へ誘導した。

 部屋から消えていく狐空の背中に「そいつは妙な力を持っています! 気をつけてください」と声をかけたら、

 足を止めた彼が、一瞬振り返り、艶笑した。
「俺を誰だと思ってんの?」
 そのまま二人は瞬身で消えた。

 こうして、イビキは、里最強の暗部によって獲物を連れ去られてしまったのだ。
(…クソ…、しかし…狐空さまなら…諦めるしかないか…。)

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 ちなみに、イビキの『口寄せ・拷問部屋』はアニメ版オリジナルの術です。原作にはありません

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