「 10 」
シカマルの心を掻き乱してやまなかった美少女が、大の男(しかも忍び)3人を相手に、互角に戦っていた。
その華奢な体躯からは考えられないレベルの体術で以て、男たちを圧倒していた。
狭い路地裏なので下手に忍術を使えない男たちは、クナイで戦っている。少女も奪ったクナイを使って戦闘している。一般人とは思えないレベルの動きだ。狭い場所で、最低限の動きで相手の攻撃を避けつつ、的確に攻撃を加える。三人を同時に相手にしているとは思えない。
真っ赤な空を背景に、華麗に舞う彼女は、シカマルの眼を釘づけにした。
肩までの柔らかな茶髪を揺らしながら、両手にクナイを持つ彼女は戦っていた。しかも、戦況は、少女の方が男たちを押していた。本当に、信じられない光景だ。今までの常識が根底から覆るようなくらい。
ついさっきまでチカラを欲していたシカマルは、今まさに自分が屈服した男たちを圧倒しているその少女に、羨望を抱いた。同時に、わずかな嫉妬も。おれより細っちい、しかも一般人、さらに女が、どうしてこんなに強いんだ、と。しかしそんなことどうでもよくなるくらい、シカマルは一心に見惚れてしまっていた。
その時、男のうちひとりが、殺気に満ちた目で、シカマルを見た。
少女が来てから蚊帳の外だったシカマルが、彼の意識に上ってしまったのだ。
まあ、当然のことだろうな、とシカマルは思った。
相手は2人、強いのと弱いの。そしたら弱いのから潰すのは、当たり前だ。おれだってそうする。
そう考えていたら、思った通りに、その男は己へヒュンと力強くクナイを放ってきた。3本も。
シカマルも(逃げられないので)、構える。これ以上少女の前で情けないところは見せられない。悲鳴を上げる脚を無視しながら、目の前の男を見据えた。凄まじい勢いで飛んでくる3本のクナイ。正直、速過ぎて見えない。
それは一瞬のことだった。
カンカンカン、と3連続の高い金属音が聞こえ、自分の前でクナイが力なく落ちていった。
「大丈夫か?」
少女だった。男たちを相手にしながら、彼女がこちらも見ずにそう訊いて来た。どうやら、彼女が放ったクナイが3本を弾いたようだ。
――おれは、守られっぱなしだ。
忸怩たる心地だ。
情けなさと悔しさで唇を噛んだ。
間もなく、戦闘は終わった。
気絶した三人の男たちの上に、彼女は無傷で立っていた。
そして、こちらへ、安心させるようにニコリと微笑みを向けてきた。
深紅に染まる風景の中、美しく笑む彼女は、とてもきれいだった。
――今まで生きてきた中で、こんなにきれいな人は、初めて見たぜ…
そして女に守られたおれって情けねぇ…。
そう思いながら、どっと押し寄せた安心感と限界を迎えた脚からの出血ゆえ、シカマルは意識を失った。
その華奢な体躯からは考えられないレベルの体術で以て、男たちを圧倒していた。
狭い路地裏なので下手に忍術を使えない男たちは、クナイで戦っている。少女も奪ったクナイを使って戦闘している。一般人とは思えないレベルの動きだ。狭い場所で、最低限の動きで相手の攻撃を避けつつ、的確に攻撃を加える。三人を同時に相手にしているとは思えない。
真っ赤な空を背景に、華麗に舞う彼女は、シカマルの眼を釘づけにした。
肩までの柔らかな茶髪を揺らしながら、両手にクナイを持つ彼女は戦っていた。しかも、戦況は、少女の方が男たちを押していた。本当に、信じられない光景だ。今までの常識が根底から覆るようなくらい。
ついさっきまでチカラを欲していたシカマルは、今まさに自分が屈服した男たちを圧倒しているその少女に、羨望を抱いた。同時に、わずかな嫉妬も。おれより細っちい、しかも一般人、さらに女が、どうしてこんなに強いんだ、と。しかしそんなことどうでもよくなるくらい、シカマルは一心に見惚れてしまっていた。
その時、男のうちひとりが、殺気に満ちた目で、シカマルを見た。
少女が来てから蚊帳の外だったシカマルが、彼の意識に上ってしまったのだ。
まあ、当然のことだろうな、とシカマルは思った。
相手は2人、強いのと弱いの。そしたら弱いのから潰すのは、当たり前だ。おれだってそうする。
そう考えていたら、思った通りに、その男は己へヒュンと力強くクナイを放ってきた。3本も。
シカマルも(逃げられないので)、構える。これ以上少女の前で情けないところは見せられない。悲鳴を上げる脚を無視しながら、目の前の男を見据えた。凄まじい勢いで飛んでくる3本のクナイ。正直、速過ぎて見えない。
それは一瞬のことだった。
カンカンカン、と3連続の高い金属音が聞こえ、自分の前でクナイが力なく落ちていった。
「大丈夫か?」
少女だった。男たちを相手にしながら、彼女がこちらも見ずにそう訊いて来た。どうやら、彼女が放ったクナイが3本を弾いたようだ。
――おれは、守られっぱなしだ。
忸怩たる心地だ。
情けなさと悔しさで唇を噛んだ。
間もなく、戦闘は終わった。
気絶した三人の男たちの上に、彼女は無傷で立っていた。
そして、こちらへ、安心させるようにニコリと微笑みを向けてきた。
深紅に染まる風景の中、美しく笑む彼女は、とてもきれいだった。
――今まで生きてきた中で、こんなにきれいな人は、初めて見たぜ…
そして女に守られたおれって情けねぇ…。
そう思いながら、どっと押し寄せた安心感と限界を迎えた脚からの出血ゆえ、シカマルは意識を失った。