「 3 」

 嫌い嫌いってずっと言ってたけど、本当は、嫌いじゃなかったんだ。
 好きって言って、突き放されるのが、怖かったんだ。
 石橋を叩くように、あんたの優しさを確かめていたんだ。
 本当におれを見捨てないか、本当におれを受け容れてくれるのか。
 それを確かめるために、おれは厳しいことばかり言っていたんだ。
 でも、そのたびに、あんたはおれを受け容れ、許し、優しく抱きしめた。
 それでもおれは人を信じられなかったから、決して甘いことは言わなかったけど、
 本当は、もう、好きになっていたんだ。
 その『好き』という感情は初めてのもので、それが恋愛としてか家族愛としてか友愛としてか、どんな名前の付くものか分からないが、とにかく、好きだった。

 目の前の灰を見遣る。
 骨まで残っていない。
 線香の臭いを孕む風により、それは呆気なく散っていった。
 大切に守っていたものは、おれが手を下せば、ほら、呆気なく壊れてしまうものだ。
 本当に、呆気ない。
 だから、おれは大切なものを作ってはいけないんだ。今までも、これからも。

 しばらく眺めてから、きびすを返す。
 これからこの里への復讐でもしようかな。
 今までのツケを払ってもらおう。
 さっきも言ったが、三代目亡き今、そして裕也もいないこの里は、おれにとってゴミでしかない。
 手にクナイを持ち、くるくると回す。
 まず、どこから壊そうか。






 そう、ナルトが里の破壊を決意しているときに、それは起きた。



「おれもだよ、ナルト」




 聞き慣れた、甘ったるく、優しく、柔らかく、魅惑的で、適度に低い、非凡な声。
 ナルトが、本当は好きだった声。

 ――まさか、

 衝撃のまま後ろに振りかえると、
 そこには。

「おれも、好きだよ」

 先ほど己によって殺されたはずの、少年が立っていた。
 全てを受け容れるような穏やかな笑みを浮かべて。

「ま…さか」
 そんなはずが。

 暗部総隊長で自他ともに最強の忍びだと認める、このおれの本気の術が、破られるわけない。上忍でもどんな暗部でも破られたことはないのに、いわんやこんな一般人に、だ。
 
 呆然と裕也を眺めていると、彼はにっこりと笑みを深めた。







 裕也の身体が崩れるように壊れる、1分前の話。
 同時に、彼らの再会する3年前の話。

――――


 …エピローグb(最終話)へ続く…

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