「 第9話 邂逅 from 内海裕也 」

 そうして、おれは、あいつに会った。



第9話 邂逅 from 裕也



 ナルトの背に乗せられた裕也は、10秒ほどでアカデミーの屋上に着いた。
 経験したことの無い恐ろしいスピードだったので、裕也は気持ちが悪くなっていた。脳が処理できる範疇を余裕で超えていたのだ。乗り物酔いとは違う気持ち悪さに襲われていた。
 「着いたってばよー♪」という明るい声を遠くに聞きながら、裕也は屋上の床に乱暴に落とされた。気分が悪い上に、配慮の無い落とされ方をして、裕也は「ウッ」と呻いた。床につくばり、吐き気を我慢する。――ここで吐いたらおれは今度こそプライドを失ってしまう…!



 一方、床を這う裕也を見ながら、ナルトはほくそ笑んでいた。
 ――ざまあみろ、内海裕也。3日前おれにナメた真似してくれやがった礼だ。
 2人が会ってから屋上に来るまでナルトは走ったが、それは明らかにアカデミー生や下忍クラスの速度ではなかった。忍とはいえあんなに速く走れる者はいない。(しかし、裕也はそれを知らないので『忍者って皆こんなに速く走れるのか』と片づけてしまっていた。)
 一般人である裕也が自分の速さに耐えられるわけがないことを知ってて、ナルトは手を抜かずに走った。もしかしたらあまりの空気抵抗で息ができなくなり死んでしまうかもしれない。ナルトの陰から顔を出したら首が吹っ飛ぶかもしれない。そういう危惧があったが全く意に介さず彼を乗せた。背中で裕也の体が弱弱しく揺れるのが分かって気分がよかった。

 あの夜以来、ナルトは裕也を避けていた。
 あの夜。
 西の森でナルトは裕也を遠ざけようとした。どうせ、こんな姿を見たら、お前みたいな一般人は俺のことを恐れ離れてゆくのだろう、忌み嫌うのだろう。そんな気持ちで任務という名の惨殺の現場を間近で見せた。
 俺のことを何にも知らないくせに、軽々しく「惹かれる」なんて言うな。本当の俺はこんなに汚いんだぞ。恐ろしいんだぞ。平気で人だって殺すんだぜ。今までに何百人もの人間を殺してきたんだ。俺やお前くらいのガキだって殺してきた。
 表の俺は『九尾のガキ』『化け物』として恐れられ排斥され、裏のおれも『非情なる暗部総隊長は化け物だ』として恐怖の対象とされている。
 ――結局俺は、仮面も素も、化け物なんだぜ。

 そんな俺を、お前みたいな細っちいガキが受け入れられるはずがない。
 軽々しく惹かれたなんて言うな。
 ほら、こんなに、怖いんだぞ。
 そんな気持ちで見せた。

 しかし、彼、内海裕也は。
 離れていくどころか、『ますます惚れました』と言い、俺を…抱き寄せてきた。力いっぱい、ぎゅうっと。頭の中が、彼の甘い香りでいっぱいになった。

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