▽とある男の友人
何と言う事だ!
久しく会っていない友からの梟便で、男は思わず頭を抱えた。
これ以上、子供に無理を強いられない。
一先ず、急いで他の友人とコンタクトを取らねばならない。
早く、子供を救わねば……ッ!
そんな義務感を胸に、俺は箒に飛び乗った。
男がいた部屋には羊皮紙の切れ端が落ちていた。
良く言えば個性的、悪く言えば超絶的な字の汚さだった。
ミミズがのたっくったと言えればまだ良い方。
どこかの古代民族の文字か、それとも子供が作った暗号か、他の何かか。
ちなみにその紙に書かれていたのは、単なる男の友人からの報告だった。
『弟子ができました☆』
…………なんとも気の抜ける報告だ。
しかしその報告に顔を青くしたのは受取手だった。
その手紙の発送主___ゴッドリック・グリフィンドールは奇才であり鬼才と呼ばれるべき人物である。
こう言うと偉大な人物だと思うだろうが、それは違う。
ゴッドリックは確かに群を抜いて天才である。
しかし、彼ほど養育者として不適格な人物はいないと明記しておく。
奴は生活力___家事スキルが皆無なのだ。
つまり、人が生活するのがおぞましい所に弟子(おそおらく子供)を放置することになる。
それは常識的にまずい。
そう、思い立った男が脇目も振らずに旅立ったのは仕方ない。
▽一方その頃
「へくしっ!」
「風邪か?」
「うー、俺今まで風邪なんて一回もひいた事ないんだけどなぁ」
「……(風邪の方が逃げて来そうなタイプだ)」
なんてこの後来る、嵐の前触れを感じる事はなく、のんびりと過ごしていた。
掲 載 120610
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