冷たく厳しい冬がようやく思い腰を上げ、暖かな日差しが舞い降りる日が増えてきたとある日。 おれは縁側に座って日向ぼっこをしていた。 隣に座るのは大好きな姉さん。 そして傍らには、美味しい大福。暖かい緑茶。 他愛のない話をしていても、おれにとっては最高の安らぎを得られる時間だ。 その安らぎに暖かな幸福感を感じていると、姉さんがおれにこんなことを尋ねてきた。
「ねぇ、慎ちゃんの誕生日っていつ?」
「いきなりどうしたんスか?四月十三日っスけど・・・」
いきなりの質問に戸惑いながらも答えると、姉さんはえへへ、と笑って
「慎ちゃんのことは何でも知っておきたいの!」
なんて、可愛いことをサラリと言う。 その台詞と笑顔でおれは更に姉さんを好きになってしまうんだ。
「未来ではねぇ、大切な人のお誕生日には贈り物を贈るんだよ。だから、わたしも慎ちゃんのお誕生日には何か贈り物を考えるから、楽しみにしててね!」
姉さんは更にこう続ける。 贈り物をもらえるということももちろん嬉しいけれど、それよりも、姉さんがこうしておれのために何かを考えてくれていることが何より嬉しいと思った。
その嬉しさを、姉さんにも返したい。 そう思ったおれは、姉さんに尋ねる。
「じゃあ、おれも姉さんの誕生日には何か贈り物を・・・!姉さんの誕生日はいつっスか?」
すると姉さんは少し複雑そうな表情を浮かべて言った。
「うん、あのね、二月十四日なの」
・・・・・・・・・・・・! つい、たった、この間じゃないか! おれ、姉さんの誕生日にお祝いの言葉すら言えなかった・・・!
愕然として思わず黙り込んだおれに、姉さんは
「慎ちゃん、気にしないでいいよ?わたしも教えてなかったんだから」
そう、優しく声をかけてくれる。 けれど、それではおれの気が済まない。
「それじゃあ、遅くなったけど、今からでも!姉さん、何か欲しいものないっスか?」
意気込んで訊ねたけれど、姉さんはふるふると首を横に振る。
「何でもいいんスよ?」
更にそう聞いてみると、姉さんはやっと口を開いて言った。
「欲しいものは、ないの。だけど・・・」 「来年も、再来年も、その次も、ずうっとずうっと・・・誕生日には慎ちゃんの隣にいたい」
顔を伏せ気味にして小さな声でそう呟く姉さんの耳は真っ赤に染まっている。 おれは、そんな彼女を抱き寄せずにはいられない。 ぎゅう、と腕の中に閉じ込めると、おれは姉さんの耳元に口を寄せる。 姉さんの甘い香りが鼻腔をくすぐり、なんともいえない幸福感に包まれた。
「そうやは欲がないっスね・・・そんなこと、当たり前じゃないっスか」
わざと名前を呼び、耳元で囁くように言うと、姉さんはビクっと身体を震わせて、潤んだ瞳でおれを見上げてくる。 その瞳をしっかりと見つめ返しておれは言った。
「でも、そういうところが・・・大好きっス」
そうして姉さんの可愛らしい唇に、おれはそうっと自分の唇を重ねた。
毎年、姉さんの誕生日にはこうして口付けを贈ろう。 この世に生まれてきてくれて、こうしておれと出会ってくれて、一緒に隣を歩いてくれて、ありがとうと感謝を込めて。 そして、そうやへの変わらない愛を誓って。
甘い甘い口付けを交わしながら、おれはそう心に決めたのだった。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 誕生日だったということでいただいちゃいました!もう、慎ちゃんにきゅんきゅんさせられっぱなしですっ* ホントにありがとうございます(^O^)
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