小説 | ナノ




高杉は散々祝われた末、帰る支度をしていると小さく舌打ちした。
同門の仲間に祝われるのはむず痒いが嬉しい。師にも欲しかった本を頂いた。それで、いつもなら満足したはずなのに、今日は一度も銀色を見ていない事がもやもやとしていた。

別に祝いの品が欲しかった訳ではない、銀時にそんな品など期待していない。
恐らく、自分はただ。

「・・・銀時のばぁか」
「馬鹿って言う方が馬鹿なんじゃないっけ?」

突然の声に高杉は肩を揺らした。
振り返れば、いつも眠そうな瞳の銀色の子供。
夕暮れの太陽光に銀髪がキラキラと輝く。

「何処行ってたんだよ、てめぇ」
「ないしょ」

飄々と返す銀時に、高杉はあからさまに舌打ちした。どうせ、いらぬ気を使って隠れていたのだろう。銀時を異端視して、顔を顰めるものは多くはないが少なくもない。
祝い事だと察した末に雲隠れしたのだろう。
そんな思いと、はっきり用件の言わない態度に苛立が募る。

「なぁ、高杉。ちょっと付き合えよ」
「・・・・? 何だよ」

いいから、こっち、と銀時は歩き出した。

高杉さん誕生日おめでとう。