小説 | ナノ




銀時は、夏の間気に入りの北側の涼しい部屋でごろごろと寝転びながら、高杉の好きなものを少ないながらも指折り数えていた。

「先生、剣術、学問、本に、三味線・・・菓子は嫌いじゃねぇみてぇだけど、さほど好きってわけじゃねぇよなぁ・・・」

後は奇麗なものや典雅なものも好きなようだが、銀時に手に入るものじゃないので却下。

「メンドクセー奴」

開け放った障子や襖の向こうから風が吹き、ちりりと風鈴を揺らした。
その風が気持ちよくうとうととして来る。
瞼の裏に小生意気そうな高杉の顔が浮かんで消えた。
「メンド・・・」

銀時は眠りの世界に引き込まれて行った。

『本当にお前剣術強いのかよ』
『?』
『てめぇは、先生とばっか打ち合いやがって! 俺ァ、てめぇになんぞ負けねーぞ!』
『ちがう』
『何がだよ!』
『ぎんの、けんじゅつじゃない』
『竹刀握って先生に習ってるだろうが! 俺と勝負しろや!』
『やだ』
『尻尾巻いて逃げんのかよ!』


ちがうよ、たかすぎ、おれがならってるのは一一一。

「ひとを切らないための術だよ」

高杉さん誕生日おめでとう。