小説 | ナノ



取りあえず、分からない事は先生へ。
銀時がここで覚えた最初の事だ。
桂の話を聞き軽く悩んだだけで、あっさり考える事を放棄した銀時はすぐに松陽の元へ向かった。

「せんせー」

そう言って、障子の開いた部屋を覗き込めば松陽は顔を上げ「どうしたんですか?」と銀時に視線を向けた。
ととと、と側に寄ると銀時は桂に聞いた話をする。
それをにこにこ笑顔で聞いていた松陽は、銀時の話が一段落すると何が知りたい?と優しく促す。

「あのさ、贈り物ってなにすりゃいーの?」

人の物を奪った事はあれど、贈った事はない銀時は聞いた。

「そうだね。基本的には相手を祝う気持ちが大事だけど、喜ばれるのは相手の趣向・・・好きなものにあったものが良いかな」

君が本を贈られても嬉しくないだろ、と笑いを含んだ声で言う松陽に、確かにと銀時は頷く。

「俺くれるなら甘味がいい」

その養い子の言葉に、くすりと笑いながら松陽は今は晋助の話だろ、と注意した。
注意したとたん、眉間に皺寄せた銀時を見ながら松陽は、ゆったりと言う。

「悩みなさい、銀時。君がそうやって人の事で悩むのは良い事だ」
「何が良いか、教えてくんねぇの?」

答えを探す事を放棄した言葉を、にこやかに突き放す。

「君が悩むのが良いんだよ」

良い事なのかなぁ?と思いつつ銀時はこてんと小首を傾げた。
松陽は傾げられた頭をそっと撫でる。

「先生は、晋助になんかやるの?」

銀時の言葉にまぁ、ヒントくらいはいいだろう、と思いつつ「そうですね」と言いながら書棚から一冊の本を取り出し「私はこれを」と差し出せば、銀時はうげ、と言わんばかりの顔になった。

「高杉、本好きだもんね」
「ええ、それじゃあ、銀時、頑張って考えなさい」

微笑みとともにこれ以上は教えませんよー、と通告された。

高杉さん誕生日おめでとう。