小説 | ナノ



最初は嫌いだった。






1ヶ月前、とある餓鬼が村塾にやってきた。
新しく入る子です。仲良くして下さいね、と先生が生徒に声をかけたが俺にはどうでもよかった。生徒が増えるだけだ。いつものこと、だと考えていた。だが、アイツの容姿を見て気が一瞬にして変わった。

――、一目で見えたのは白い髪、血の色をした紅い眼、そして両手で大事そうに握りしめている刀。

(何だアイツ…)

一瞬、老人かと思った。だけどよく見りゃあ俺と同年齢ぐらいの餓鬼だった。

新しく入ると、まずは自己紹介だ。白髪が自己紹介をする―――はずだったが、何故か先生が淡々と喋りはじめた。

「坂田、銀時と言います。銀に時間のじを書いてぎんとき。皆さん。この子はまだこういった環境に慣れていないんです。だから色々とあると思いますがどうか、仲良くして欲しい。」











――あれから数週間が経った。

先生がああ言ったけど、何も変化がなかった。いつも通りに授業を受けて、遊んで、帰っていった。
白髪に、誰も話しかけることはなかった。

白髪も、誰かに話しかけることはなかった。




けれど、最近変化が起きた。苛めが起きたのだ。苛められているのは勿論あの白髪。


俺が止めたら一発で苛めはなくなる、とヅラ――村塾で知り合った奴が言っていた。けれど、止めなかった。



俺はアイツが嫌いだ。別に外見が嫌で、とかそういう理由ではないのだ。外見は人と変わっているが、たいしたことじゃない。むしろ、銀色の髪は綺麗だと思う。
だが、アイツの飄々としている所が嫌いだ。苛められても何されても顔色一つ変えずにただジッと唇を噛み締めて耐えていた。

あと、ボーっとしていて、やる気がない態度や先生の傍にいつもいること…その他沢山あるが、とにかく嫌いだった。


――いや、嫌いではなく、気に食わなかったのかもしれない。






「―――晋助」

ハッとした。先生の声で現実に引き戻された。


「あ、何でしょうか、先生」

驚きで鼓動が速くなる。心臓の鼓動が先生に聞こえないように右手で胸に拳をのせた。


「銀時知りませんか?さっきからあの子が見えなくて……」

先生の表情が籠る。心配そうに部屋を歩き廻ったり外をみたりしていて、凄く落ちつかない様子。
俺は顔を歪ませてはぁと重苦しいため息をはいた。

「………先生、俺が捜してきます」

そう言うと先生の表情がぱぁっと明るくなった。先生は微笑んでお願いしますね、そう俺に言い残した。こういう時は、素直になって協力すれば先生は俺をもっと信頼してくれるはず。――全ては先生のため。

俺はニコリ、と愛想笑いを浮かべて部屋を後にした。


そのまま白髪がいそうな所に足を進めた。教室、トイレ、各部屋、あちこちあらゆる場所を捜したが、どこにもいない。すぐに見つかるだろうと油断していた。
部屋中を捜しても見つからない。捜していない所と言えば外だ。俺は草履に履き替えて外に出て、捜し始めた。

そう時間が経たない内に見つけることができた。村塾の外にある大きな木がある。その木の陰に刀を握り締めて身体を丸くして縮まっていた。
おい、と声をかければ小さな身体がびくりと震えた。震えたが、こちらを向かない。それに苛立ちを感じて、俺は声を荒げた。

「無視すんじゃねェ!!」

ガッ、と効果音がつくぐらいに白髪の肩を己の方に押して、無理やり振り向かせた。


「ゃっ…、…」

小さな声が漏れた。
白髪は顔を見られるのが嫌なのか、両手で顔を隠している。右手首を掴んで、顔から離すと、透明の液体が紅く大きい眼から流れ落ちていた。



はた、と身体と思考が一時的に止まった。









…ないて、いる……?



初めて、無表情以外の白髪を見た。というか、泣いている所も、声を聞くのも初めてのことだった。

カタカタと小刻みに掴んでいる右手が震えている。どうしていいのか分からず手を離す。白髪は俺に掴まれていた手首を左手で押さえて、身体を震わせて俯いていた。


「………」

声を上げずに、声を殺して泣いていた。


どうして?苛められたからか…?

動揺する心を抑えて、白髪をみた。着物は薄汚れていて所々穴が開いていたり破れていた。足元をみると草履を履いてなくて、足から朱い血が流れていた。


「――おま…え、どうして泣いてるんだ…」

震えた声で問いかけるが俯いたまま何も答えない。

「苛め、られたからか…?」

そう聞くとふるふると頭を左右に振って拒否を示した。なら、どうして。そう聞く前に白髪はゆっくりと顔をあげた。

紅い眼と深緑の眼がばちり、とあった。


「……こころ、が、いたい、の」

微かな声で、途切れ途切れだったが白髪はそう呟いた。

心が、痛い―――それは、どういう意味なのだろうか


「心…?」

「……おれは、みんなと 同じ じゃな、い」

ぼそぼそと喋り始める白髪。同じじゃない――それは自分の外見のことだろうか。首を傾げて話に耳を傾けた。

「ぉ、おれのこと、鬼子って言う大人もいるし、けど…先生はっ、おれのこと、人間ってみとめてくれて…っ」

話の途中から涙の雫が白髪の頬を伝っていった。ぽろぽろと泣き始めて俺は戸惑ってしまった。戸惑っている内に白髪は口を開いて続きを話始めた。


「だけど、やっぱりおれは、人とおんじじゃない…、お前とも、おなじじゃ な い」

「――っそんなこと、!」


「やっぱり、おれは人間にはなれなかった……っ」

積み上げてきた壁が崩れるように、白髪は涙を流して、小さな声をあげて泣いた。

俺はどうしていいのか分からなくて、分からなくて、






気がついたら、俺は手を伸ばして白髪を抱きしめていた。こんなことをするのもおかしいと思うけど体が勝手に動いていた。嫌がれるかなと思って離そうとしたが俺の着物の袖をぎゅ、と強い力で握りしめていた。

袖を掴んでいる手が、震えていた。







「…泣く なよ…」

声が、擦れた。頬に何かが伝っていて、頬に手をあてると白髪と同じ液体が眼から流れていた。



「銀…時…泣くなよ…」


――初めて、名を呼んだ。ぎんとき。こいつに合った名前だと思った。

名前を呼ぶと、白髪――いや、銀時は泣くのをやめて俺の顔を見つめた。


「…なまえ……」

「、名前で呼んでいいか?」

遠慮がちに聞くと、銀時は嬉しそうに笑って頷いた。

初めてみる銀時の笑顔はとても綺麗で、思わず見惚れた。






「―――銀時、先生の所に行くぞ!」

「…っ、うん!」


立ちあがって銀時に向かって右手を差し出せば、銀時は照れ臭そうに笑って手を取った。


繋いだから伝わるやさしい温もり


(あ、帰ってきた!遅いぞ高杉!)
(先生、只今帰ってきました…ってヅラァ!何でここにいるんだよ!)
(ふふ。さぁ二人とも手を洗って一緒に菓子を食べましょうか)





―――
可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い(ry
村塾やっぱり大好きです。子高銀んんんんんん!!!萌えます、小さい子の威力に魅了された霧咲はhpが100000上がった←
ありがとうございました!

繋いだ手から伝わるやさしい温もり