さっきな、サンジがチョコいっぱい作ってくれたんだ!
「ほら!名前にもやるよ」
反応をする前に口にころんとチョコレートを入れられた。指が唇に当たった気もするけど、ルフィはどうもしてないので気にしないことにする。
カカオの味がじわりと口の中で広がり、それと共に少し苦いような液体が流れた。
お酒だ…、
「うまいか?」
『ちょ、これお酒入りじゃないの?』
「そうなのか?」
お酒に弱いからか、この一口で喉の辺りがじんわりと熱くなる。
もーサンジくん、頼むよ。てかルフィ気付いてないんかい。でも美味しいかも!サンジくんが作ったんだもんね、当たり前か。もぐもぐ。
「名前さあ」
『なに?』
「名前さ、」
ルフィの声が低くなった気がしてチョコを口に含みながら斜め下の方に向けていた視線をルフィへ移した。
そしたら同時に首になにか温もりが触れて、そこがじんわりと暖かくなる。
もぐもぐ動く口も止まる。
『な、なに?』
「んー?」
『んー?じゃなくて』
ルフィの右手の平が触れている。ゆっくりと下にさすられて背中がぞくりとした。
『や、なに、ルフィどうしたの?』
「んー」
なんとなくだよ。ただのわたしの勘違いかもしれない。でももしそうでなければ、きっとルフィはわたしに見とれている。
丸い瞳をまっすぐ向けながら、口元は少し笑ってる。笑ってるというよりも微笑んでると言うんだろうか。
ルフィ、どうしたの。
そう言葉が形になる前にルフィが近付いてきて、目の前がルフィでいっぱいになった。
ちゅう、と音は出ないけれどちゅうとされた唇と唇。触れては優しく離れたキス。
頭の中がぐるぐる回りだす。ルフィがチョコをくれただけで、ルフィが触れてくるだけでおかしいのに。そうだ、ルフィもチョコを食べたはず。もしかして、
「にしし、チョコの匂いがする」
ちがう、よってるのはこっちのほうだ
わたしのチョコにだけお酒が入ってるなんて知るのはもう少しあとのこと。
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20110214
happy valentine!