夜。風に当たりたくてわたしは船の縁に座って足を海へと放り出す。さっき飲んだお酒がいい感じに回ってる。
風が気持ちいいなあ、なんて考えていると背後に足音が聞こえて振り返った。


「名前じゃないか」

『お頭、何してるんですか?』

「かくれんぼだ、一緒にやるか?」

『…何歳ですか』


いいからいいから、と手を引かれ甲板の方まで連れていかれる。お頭のお遊びに付き合わされるのはこれで何回目だろう。

まあ、そんなことこの広い海を航海することを考えたら何てことないんだけど。


『鬼は?』

「えっとー、誰だっけかな?」


大丈夫なのか、それ。

果たして何人の船員たちがこの遊びに参加しているのだろう。それに、気付いてるのか気付いていないのか知らないけど、二人でいた方が見つかりそうな気がするんだけどな。

でも、嬉しそうなお頭の顔を見たら、そんなことも言えない。

荷物がたくさん置かれた場所へ行き、二人でそこの隙間へ座り込む。良い歳して何しちゃってんだか…。って、わたしもか。


「今日は一段と冷えるなあ」

『そうですね』

「よし、暖めてやろうか!」

『は?』

「寒い日には人肌が一番『何言ってるんですか、やめて下さい。変態。』

「おま…へ、変態って」

『本当のことじゃないですか』

「褒めるなって」

『褒めてません』


おかしそうに笑った。

どこまでポジティブシンキングなんだこの人は。足の上に座らされ、後ろから抱きしめられているこの状況。

普通だったら、おかしいって!


「なんだよ、名前照れてるのか?」

『照れて、ません』

「まあ、そーいうとこも可愛いんだけどな」


笑う声を背中越しに感じて、頭をがしがしと撫でられた。この人はこーいうことを無意識でやってるのだろうか。…人の気も知らないで。


「名前顔赤くないか?」

『あ、赤くありません!』

「照れてるだろ?」

『だから照れてないですって!』


後ろから覗き込むお頭にびくりとして、わたしは体を丸めた。そしたら逆にもっと抱きしめられる形になってしまい、細くて太いような腕がわたしのお腹に食い込んだ。

この人はいつだってずるいんだ。知らない間にわたしの心を掴んでいて、離さなくて。

わざと強がるわたしの気持ちもきっと全部知っていて。


「好きだな、そーいうとこ」


顔が熱いのがさっき飲んだお酒のせいでも、風邪を引いたわけでもないことも分かってる。


『わたしは、嫌い』

「なんでだ」

『…』


自分の気持ちも素直に伝えられない、から。


「それでもおれは好きだな」



恥ずかしくて、わたしは首元に回った腕を抱きしめ返すだけ。

「ありがとう」小さく零した言葉が耳に届くことを想って。





不器用だけど
それでもいいなら、わたしは





『ねえ、そういえば鬼は?』

「鬼ならもういるさ」

『え?』

「既に捕まってんだよ、お前は」






- - - -
葵さま*

お待たせしましたーーっ!しゃ、しゃしゃしゃシャンクスです。しゃ、シャングズでず。ギャグ甘×冬ということで、あ、甘いのかな、これ。その上、シャンクス初夢で申し訳ないです。顔を上げれません…。
こんな小説ですが、ご覧になってくださればと思います。とにかく、この度は5万打企画に参加してくださりありがとうございました!

20110128