わたしはその日、朝から泣いていた。自分でも呆れるくらい。
だってエースが海へ行ってしまったから。
ルフィとエースとここで、よく遊んだものだ。名前は女だからダメだとか言われたりもしたけど、一緒に鬼ごっこしたり、わたしが持ってくるお弁当を三人で食べたり。
三人で過ごした時間がぐるぐる頭の中を走り回ってゆく。ああ、寂しい。分かってはいたけど。寂しいよ。
「いつまで泣いてんだー?名前ー」
後ろから声が聞こえて、尋ねる必要もなくその声の主は分かった。きっと情けなく思ってるんだろう。泣いているのはわたしくらいだから。他の皆も、寂しがってはいたけど、みんなとっても嬉しそうだったから。
朝から泣き続けているひどい顔を見られたくなくて、振り返らずに海をまっすぐ見つめた。すっかりエースの船はもう見えない。
そしたら視界の左側からにょき、と麦わら帽子をかぶった顔が生えてきた。
『…わああっ』
「やっぱり泣いてんじゃねえか」
そう言ってわたしの濡れた目元を雑に拭った。
『いた…痛いよルフィ』
「名前は泣き虫だなっ!」
『違、うもん!別にそういう訳じゃ…』
「おれが出航するときも泣くのか?」
『え?』
「エースのときみたいに名前はこうやって泣いてくれるのか?」
目元からさらさらと落ちて頬に大きな手が添えられる。
最初ルフィが何を言っているのか分からなかったけど、ゆっくり言葉が頭の中に整理されていって、気付いたらルフィはなんだか悲しそうな顔をしていた。
『ルフィ、』
「名前が泣いてんのなんて嫌だぞ。…エースは。」
『そうだけど…』
エースがいなくなっちゃうのはルフィも寂しいでしょ。
「そりゃおれも寂しいけどよ、エースが行って名前が泣いてんのは嫌だ」
なんか、ルフィが。近い気がする。距離が、とかじゃなくて。
「おれも17歳になったら海に出るけど」
気付けば両頬に手を添えられていて、顔を正面に向けさせられる。
なんか、熱い気がする。ねえ、なんで。
「笑えよ名前」
やっと二人きりになれたんだから
『…うんっ』
わたしが笑ったら、ルフィも嬉しそうに笑った。
次流す涙はきっと嬉し涙かな。
- - - - れんさま*
とりあえず、大変お待たせ致しました…!きっと忘れているかと思いますが、れんさまに捧げます。盃兄弟の設定ということで、エースあんまり出せていないのですが、エースに涙するヒロインに嫉妬するルフィを書いてみました! リクエスト通りに書けたかどうか、ほとんど不安でいっぱいですが、読んでくださればと思います!5万打企画に参加して下さり、ほんとうにありがとうございました!
20110623
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