「おれの仲間になれよ!」


そう言われてこの船に乗った。もうどのくらい経つんだろう。近所のお店の野菜の値段も、お気に入りだったカフェの香りも忘れてしまったな。

冒険は楽しい。今まで知らなかった世界へ行けるし、新しいことがたくさんある。
でも勿論、それは楽しいことばかりでもないんだけど。


「名前、アイス喰わねえのか?」


船縁のところで海を眺めていると、アイスを二つ手に持ったルフィがこっちに歩いてきた。


『ルフィ、持ってきてくれたの?』

「ああ!持ってくって言ったらサンジがうるさかったんだけどよ」

『そっか、ありがとう』


パインとみかんのミックス味らしい。みかんはナミの。口にしてないのに美味しそうな香りがしてくる。差し出されたアイスを見つめる。


『ルフィ』

「なんだ」

『そんなアイスガン見されてると受け取りにくいんですけど』

「おう、わりーな」


わたしの分まで食べちゃいそうなのに、ルフィはよくわたしの分も持ってきてくれる。


『ありがとね!』

「おう、いいぞ!」


にしし、と笑うルフィを横見してわたしもアイスに頬張りついた。んーおいしー!


「名前、」

『ん?』

「付いてんぞ」


え、と思い横を向いた瞬間頬を指で押しつぶされる。


『いだ!』

「お前食べ方雑だなー」

『ちょ、ルフィらえには言わえやくないんえすけお』


ぐりぐり押すように指でわたしの頬についたアイスを拭い取る。あの、結構痛いんですけど、いやかなり。あんた、もっと優しい取り方は知らないのか。そう思いながらルフィを軽く睨むと、その指をパク。

食べるんかい。


「にしし!お前やっぱアホだな!」

『は!?ルフィに言われると傷つくんですけど!』

「だってそうじゃねえか」

『ルフィはデリカシーってもんがないよね』

「なんだよデリカスーって」

『もういいよ』


なんだよ変な奴、とけらけら笑う変な奴。それでも、わたしとの会話で生まれる笑顔が嬉しくて、わたしだけに向けられてるものだったら、とか思ってしまうわたしはやっぱりアホなのかな。


「お、あれ島じゃねえか!?」

『あ、ほんとだ』

「ナミに聞いてくる!」


おーおー、嬉しそうに走っていきました。

あの船長は恋愛の「れ」の字も知らないよね。わたしの想いもきっと一方通行だと思うの。主に肉と冒険と仲間しか頭にしかなさそうだし。

溶けかけたアイスを口に含んで息を吐く。別に付き合いたいとか、ちやほやされたいとか、わたしだけ見て欲しいとかそういうんじゃないんだ。きっと。甘ったるいセリフも愛撫も欲しい訳じゃない。

でも嫌ってほしいとか、船を降りたいとかそういうんでもなくて。そうだよ、まだまだ冒険はしてたいし。


うーん、なんてゆうんだろう。


「名前ーー!冒険しに行くぞー!」


そうだな、簡単に言うとルフィが好き。






シンプルにいこう

海に焦がれて輝くきみの方が、わたしは好き。







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瞳さま*
仲間以上恋人未満で、これ一応切なめです(笑)ひい…やはりリクエスト通りにお答えするのがへたな様で…非力ですみません。
自分も書いていてもう何がなんだか分からなく…(おい)甘くもにがくもない内容になってしまいましたが、読んで下されば嬉しい限りです。大変お待たせしました!五万打企画に参加して下さって本当にありがとうございました。

20110319