「おれな、絶対に絶対に海賊王になってやるんだ」
何度も聞いたその決意をルフィはまた嬉しそうに言った。
隣を見たらルフィは顔に麦わら帽子を乗せたまま寝転がっている。ルフィにはまだ大きな麦わら帽子。表情は見えないけど、きっと笑ってる。きっと楽しみで仕方がないんだろうな。これから自分が進む新しい世界が。
でも、わたしはちょっと嫌だ。
そう言ったらルフィは驚くのかな。怒るかな。だって、ルフィと離れちゃうんだもん。シャンクスも、サボも、エースもみんなみんな海へ行っちゃった。
そしてルフィもいつか行っちゃうんでしょう?
いつ帰ってくるかも分からないんでしょう?
そんなの。わたし悲しくて、涙がなくなっちゃうよ。
「名前?」
『ん?』
「なんでなんか泣きそうなんだよ?」
自分の目が熱くなっていることに気が付いて、慌てて目元をごしごしと腕で拭った。
ルフィは不思議そうな顔をしてわたしの顔を覗き込む。もうこんな顔も見れなくなってしまうのかと思うと、更に目が熱くなった。
『…嬉しいの!』
嬉しい?、そう言葉を聞き返ししてルフィは帽子をかぶり直しながら首を傾げる。
『ルフィが、夢持ってて、この島を離れちゃって、もっと強くなっちゃって、いつか海賊王になっちゃうんだなって思って、わたし、すごく嬉しいんだよ』
なんか、わたしの言葉変だな。なんか意味成り立ってないかな。
それでもわたしはにぃ、っと笑って見せたのに瞼からボロッと涙の粒がこぼれた。
「名前違ぇぞ!嬉しいときは笑うんだ!」
そう言ってわたしの両頬をぎゅうっと伸ばして「ほら!」と笑って見せた。
『いひゃい、いひゃいよふひぃ!』
「泣くときは悲しいときだぞ!」
『……』
じゃあ、悲しくてこぼす涙だったらルフィは何て言う?
『…悲しい。悲しいよ』
「名前?」
『ルフィが海に行っちゃうのは悲しいよ!』
そう言うと、ルフィはちょっと驚いた顔をしたけれど、すぐに嬉しそうな顔をして笑った。
「ああ!おれも悲しい!」
『…え?』
「名前と離れちまうのは悲しいな」
『だったら、』
「でもおれすごーく楽しみなんだ!世界の海を回ってたくさん冒険をして海賊王になってここに帰ってくるのが!」
『…どうして?』
もっと小さな頃から思ってた。ルフィはいつも何かに向かって一生懸命走ってるな、って。それが食べ物であっても、なにか一つのことに。
それにわたしは追いかけて走っているばかりだったけれど、いつだってわたしはルフィの笑顔に救われてたんだと思う。
そしてルフィは麦わら帽子のつばを両手で掴んで嬉しそうにこう言った。
「そしたら、名前に楽しいところいっぱい教えられるだろ!」
『え?』
「名前と色んなとこにまた冒険するのが楽しみなんだ!」
また目が熱くなって涙が出そうになった。
そんなこと、思ってるなんて、知らなかった。
わたしは自分のことしか考えてなかったんだなぁ。ルフィはわたしの知らない間にこんなに大人になってたんだ。
「だから、」
その時、大きな風がわたし達を撫でるように吹いた。下で波がはしゃぐ音も聞こえる。
でもわたしにははっきり聞こえた。何度も聞いているけれど、何度聞いても聞き足りないくらい。
それはルフィだけの夢じゃなくて、きっとわたしも。
「海賊王におれはなる!なるんだーーーー!」
はにかめ、笑顔
確かな支えは君と話した未来
ずっと、待ってる。
- - - - あやのさま*
5万打のリクエスト企画に参加して頂きありがとうございました。 前回に引き続き、また参加して下さってほんとに嬉しいです。今回は幼少時代ということで…、アニメで子供ルフィを見てきゅん!と来たので、それの延長線で書かせて頂きました(笑) 少しでも幸せな気持ちになってくれたらな、と思います! 今回はほんとにありがとうございました。またいつでも遊びに入らして下さいね。
20101226
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