鮮やかブルー | ナノ






夕方になるくらいまで遊び疲れた頃。大きな声がわたしの耳に届いた。わくわくしたような、楽しそうな声。


「名前!試供品出来たぞ!」

『ほんとう!?』


ウソップが頬に隅やらなにかを付けた顔でわたしのところにやって来た。そんなに一生懸命やってくれたのね、ほんとに優しいなウソップたら!それにこんなに鼻も長くなっちゃって!て、あれ、それは前からか。


「早速使ってみろよ!」


嬉しそうに笑って鼻の下を指で押し当ててそう言った。差し出されたそれを見ればなんともカッコイイ、


『銃?』


触ったこともないなあ、なんて考えながら感触を味わってみる。


「多少は自分にも衝撃は受けるだろうが使い安いと思うぜ」


まともに闘ったことなんてないから緊張とわくわくした気持ちでいっぱいになる。

一発だけでも打ってみようと海へ銃を向けた。

なんか、緊張するなあ。どこまで飛んでゆくんだろう。唾をごくりと飲み込んで人差し指に力を込めた。


どきゅん!


西武劇で聞いたことがあるような音。それはとてもゆっくりに見えて先っぽから弾が出てゆく。

それなのに、


『えっ…』


飛び出していった弾はあるものに跳ね返ってわたしの顔すぐ横を通り過ぎていった。


「ルフィ!?お前何してんだよ!」

『び、ビックリした…』


あるものとは、ルフィのことで。

な、にしてんだあの人は。いくらゴム人間だからって驚くに決まってるじゃない。ほんとに、ビックリした。心臓に悪い!

ほんとうに何を考えてるか分からない、帽子で顔を見せないままこちらにやって来たかと思えば、


『あ、ちょっ』


銃を取り上げられた。


「ルフィ?どうしたんだよ?」

「分かんねえ」

「はあ?名前はだな、強くなりたいって、」

「分かんねえけど、名前はこれを使うな!」

『え?なんで、』


わたしを見た瞳は、いつもみたいな明るい瞳じゃなくて、なんだか違う。


「それに、こんなに震えてんじゃねえか」


手を掴まれてやっと分かった。銃を放ってからずっとわたしの手が震えていたこと。


『べ、別にこれはちが』

「無理に強くなるなよ」


どうして?

零れそうな言葉はいくつかあったのに、あまりにも寂しそうな顔をしていたから、わたしは何も言えなかった。





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20101111