確かに、落ちたのだ。
自分家のマンションからわたしは落ちたのだ。正確には「無理矢理落とされた」だけど。
けれど辺りを見渡すととても綺麗な砂浜だった。優しい波の音が聞こえて空には数匹かもめが気持ち良さそうに飛んでいる。まるで、バカンスに来たようで思わず息を飲む。
ここはどこだ。マンションの下は確か、雑草がたくさん生えた野原だったはず。駐車場とかもあったはずだ。
しかし、さっきのことが嘘ではなかったということを主張することが、わたしの腰が若干痛いということ。そして
「起きたか」
振り向くと先程の少年ルフィ。何ともなさそうな、明るく、当たり前かのようにしてる顔を見てむらむらと怒りが込み上げた。
『…あんた!!何してくれてんのよ!おかげで死ぬとこだったじゃない!』
「お、怒んなよ!いいだろ?ここ」
確かに空気はいいし、空は青くて綺麗だし、波の音もいい。って、それどころじゃねえんだよ!!
『てか…ここどこ!?わたし、マンションにいたよね?ここ、日本なの?』
「何言ってんだ?ここはグランドラインだ!」
『ぐ、ぐらんどらいん…』
もうやだ。意味が分からない。ここ、日本じゃないわけ?一体、わたしは誰?こいつ、こんな罪のない顔してるけど、もしかして悪魔だったりするんじゃないの?頭が痛くなり両手で頭をおさえていると、トテテテテと何やら音が聞こえてきた。
「ルーフィー!」
「おおチョッパー」
「何してるんだ?」
「そうだ。チョッパー新しい仲間だ。」
「え?」
顔を上げると…。
『たぬき!?』
「た、タヌキじゃねえ!おれはトナカイだ!」
タヌキじゃないのおおおお!?どうなってんだ、この世界。わたしはどうやら変な世界にやってきてしまったらしい。だって、このタヌキ喋ってるし。
「お、お前おれ達の仲間になったのか?」
『いや、わたしは…』
「そうだ!俺たちの仲間だぞ!」
「そ、そうなのか!よ、よろしくな!」
『へっ!?ち、違うってば!わたしはこいつに…』
「よおーっし!俺たちの船に行くぞ!」
頬にあたる風、自然の香り、入り込んでくる空気。どれも幻とは思えないくらい本物のようで、更に頭が痛くなる。
握られた腕。この感触、夢じゃない。
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