男性陣が甲板に出て行き様子を見に行くことに。あ、ウソップとチョッパーは除いて、ね。
初めてのことで恐怖もあったがわくわくした気持ちも同時に沸き上がっていたわたしはキッチンの扉から外の様子を覗いてみる。後ろでナミが危ないからやめなさいよ、と注意してるのも今のわたしには聞こえない。
どうやら相手は海賊のようだ。柄の悪そうな男たちが船に乗ってくる。食料がなんたらと話してるみたいだけどあんまり聞こえない。
うちの船員よりも人数多いけど大丈夫なのかなあ、懸命に外を覗いていると足首をつんつん突かれた。
「な、なあ、外はどうなってるんだ?」
『海賊たちがいるよ』
「か、海賊うっ!?」
『チョッパー、そういう自分も海賊だからね?』
「ハッ!そ、そーか」
『ふふ』
がぼん、とびっくりしてるチョッパーを見て可愛いなあと思った矢先だ。
「なんだ、まだいるじゃねえか」
低くて汚いような声が後ろから聞こえて背中がゾクリとした。
「名前!!逃げて!!」
嫌な予感しかしなくて、ナミの叫ぶ声と同時に振り向こうとした瞬間、何か固いもので背中を殴られ一瞬意識が飛びそうになった。
「戦ってる体力もないくらい餓えてるんだ、食料は貰ってくぜ」
「ぎゃああああー!名前ー!」
「まま、まま任せろ!こ、ここはこの勇敢な海の戦士キャプテンウソップが…食料を分け与えてやろう!」
「与えてどーすんのよ!!」
「船長さんたちはどうしたのかしら…」
打った背中が思うよりも痛くて床にへたり込む。きっとルフィたちの目を盗んでやってきたんだ、汚い奴。 みんなも戦闘準備に入ったようだ。わたしの前に立っている男を睨んでいるとチョッパーが慌ててやって来てくれた。
「大丈夫か名前!?」
『うん、ありがとう』
なんて優しい子なんだろう、きっと優しくて偉大なお医者さんになれるよ。
「名前!」
『…ルフィ』
「お前こんなとこに座り込んで何やってんだよ?」
それに反してこの船長ときたら…、状況読め! 動けないわたしを不思議に思ったのか、ルフィはわたしの肩に手を掛けたのだけど、背中の痛みが通じて体がビクリと跳ねた。
「ルフィ!それより敵が中にいるんだ」
チョッパーの言葉でルフィはやっとキッチンの中の様子に気が付いた。
「あの野郎」
小さくそう言うと、びゅんっと中に駆けて行った。
びっくりした。ルフィの顔が一瞬に変わったから。まるで獲物を捕らえるときの猛獣みたいに、信じられないくらい真面目な顔になったのだ。
そんな顔、するんだ。
そんなことをぼうっと考えていたらキッチンから大きな打撃音が聞こえて振り向くと、丁度先程の海賊がまさに空を飛んでいく瞬間。
誰のおかげかなんて、見に行くまでもない。
「二度と来んなこんにゃろおおおお!!!!」
- - - - 20101009
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