それから宴が夜通し行われて、今では数名の船員が甲板でいびきをかいて寝ている。こんなに楽しい時間なんて初めてだった。鼻に割り箸を詰めて踊るトナカイに、自分の武勇伝を語りだすクルー、飲み比べを始めるクルーに、肉を両手に走り回る船長。唯一、隣でロビンさんがわたしの話を聞いていてくれた。
あんなに、騒がしかったのに今はこんなに静かなのが名前にはとても不思議で、なんだか微笑ましかった。
辺りを見渡せば、樽や食器が散らばっていてこれでは片づけが大変だと思い、食器やらを集め始める。それをキッチンに持って行こうと立ち上がったとき、足をがしっと掴まれた。
「名前、」
『…船長』
「どこ行くんだ?」
爆睡してたと思っていたのに、お腹を膨らませた船長はわたしの足を掴んだまま尋ねた。けれど船長の瞳はとろんとしていてまだまだ眠そうだ。
『片付け、しようと思って』
「そっか」
『……』
「ここにいろよ」
そうとだけ言うと彼はにっこりと笑った。それと、名前で呼べと付け加えられて。
『でも片付け、しないと』
「ルフィ」
『え?』
「ルフィ、って呼べ」
『う、うん』
なんとも会話が通じない奴だ。そう思ったが、彼の笑顔があんまりにも無邪気だったのでしょうがなく、そこにいてあげることにする。
「お前はもう仲間だかんな」
そう言って彼は寝っ転がったまま、夜空を見上げてにししと笑った。なんとも自分勝手な人で、自由奔放な人だ。
「な!」
『…うん』
でもその大きな心がわたしにはなんだかとても心地よくて、もちろんこの船のみんなも優しくて。それが「ここに居たい」と思わせてしまう原因なんだろうな。
そんなことを考えながら隣を見たらルフィは既にぐーすかと寝ていて溜め息が漏れた。
海賊か。それもいいかもね。
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