鮮やかブルー | ナノ







夏。

暑い。夏休みに入ったというのにバイトだらけ。あー嫌んなっちゃう。どこか常夏島とかにでも旅行したい気分。

そんなことを考えながら、自宅であるマンションにたどり着く。エレベーターから降りて、ふと顔を上げたときだった。赤い服を着た、短パンの麦わら帽子を被った人の後ろ姿が目に入った。壁に寄り掛かりながら外の景色を見つめている。

夏らしい格好だなぁ、虫とり網とか似合うだろうなぁ。理由はなかったけどわたしはしばらく見つめていた。

するとその人はわたしに気付いたのか振り返ってわたしを見つめて嬉しそうに笑った。麦わら帽子を被った人物は明るそうな少年で右頬に傷があった。
咄嗟に笑顔を返す名前だったが、少年はだんだんと近づいてくる。

そしてわたしの腕を掴んで力強くこう言った。


「行こう!」

『…え!?』


当たり前かのようにそう言うと今度はぐいと引っ張り外の方に連れていこうとする。


『…え!?ちょっ、ちょっと待って!あなた誰なの!?』


な、なにこいつ…!?新手の誘拐犯か!?しかもどこに連れていくつもり!?明らかに外の方に近づいてるのに気付き、力を拒ませる。しかし少年の力は思った以上に強かった。


「おれはルフィ。海賊王になる男だ!」

『海賊、王…?』


少年ルフィは一言だけそう言うとわたしの腕を掴んだまま、塀の上に駆け上がる。ちょっと待って、ここは確か5階で、この高さは…かなりやばい。ちょっと、ほんとに待って。何こいつ足、力ませてんの!?…待って、ほんとに、わたし、まだ死にたく…


「行くぞ!」

『いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!』


さよなら、お父さん、お母さん。家族のみんな。

わたしはこの平成に新手の海賊王にさらわれました。







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100730