「異空間でもあったのかしら」
「『異空間!?』」
「昔聞いたことがあるわ、都市伝説だけどね」
連れてこられてきたのは女部屋で、出されたものもコーヒーだった。それを優雅に飲みながらそう言ったのはロビンさんで、考古学が好きらしい。ナミさんも航海士らしく部屋にはたくさんの書籍や海図があった。
『改めて聞くけど二人も、やっぱり海賊なの?』
「そうよ」
恐る恐る聞いて見ると、二人はにこりと笑ってそう返事をした。
こんな綺麗な女性も海賊だなんて驚きだ。でもこの船にいる人って、なんかみんな暖かい。どこの誰かも分からないわたしを仲間に誘って、そんなわたしを快く迎えてくれた。
みんな、優しいし。好きだけど、わたし海賊になんかなれない。
『わたし、これからどうしたら…』
「あら、ここにいればいいじゃない」
『え?』
「もちろん船長さんはそのつもりだと思うけど」
「あんたがどこからやってきたかは別として、行く当ても戻るところもなければここにいなさい」
「ゆっくり考えればいいわ」
『二人とも…』
そっか、急いだところで何か分かる訳じゃない。少しだけ、みんなに甘えてもいいのかな。ありがとう、口から漏れた精一杯の声に二人は優しく微笑んだ。
「名前ーーーーーっ!!!!」
『…!』
わたしもコーヒーを一口貰った瞬間、部屋の扉がバンと開いて、振り返るとそこには骨付き肉を頬張っている船長がいた。
「ルフィうるさいわよ!」
「なあ!これから宴するんだ、早く上来いよ!」
『既に始まってるって感じだけど』
「何の宴かしら?」
上から楽しそうな声が聞こえる。”これから”だと言ってるのにその姿を見て思わず頬が緩んだ。 ここにいたら悩んでる暇もないみたい。そんなことを考えていると、急に腕を引っ張られて顔を上げると満面の笑みの船長がいた。
「名前の歓迎会に決まってるだろ!」
嬉しくて、恥ずかしくなった。なんか、この人といると調子が狂う。そしてぼうっと突っ立っていると今度は背中をバシと叩かれた。
「ほら、行っておいで」
うん、と返事をすれば腕を強く引かれ連れられてゆく。振り返れば優しい笑顔、上からは楽しそうな騒ぎ声。
わたし、ここが好きかも。
- - - - 100819
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