海賊 | ナノ






「ぶふーっ!!!!」

「きゃああっ!!」


久しぶりの再会がこれ。

いま、彼はチョッパーに看られながら点滴を打っている。

久しぶりに会ったサンジくんにはビックリした。ナミやロビンは納得にしろ、わたしの後ろを通り過ぎただけで鼻血を吹いて倒れたのだ。

ああ、ナミなんてあの呆れ顔。サンジくん、この二年の間どこの島にいたんだろう?

その時隣にいたルフィは腕を組んで何やら考え込むポーズをした。
その小さな脳みそで一体何を考えているんだろう。口にはしないけどそう思ったとき、


「まあ、サンジが鼻血吹くのも分かんなくねえよな」


腕を組みながら、なんだか自分に言ってるみたいに、ルフィはそう言う。ん?

「え?」

意味が分からなくてそう応えると、ゆっくり大きな目が動いてわたしを捕らえた。

どき。初めて、ちゃんと見たかも。

久しぶりに会ってから、初めて。いま、ルフィのことちゃんと見た気がする。

前より少し大きくなった背。そんなに変わらないけど伸びた髪に、もっと逞しくなった腹筋が服からちらつかせる。そして胸の大きな傷。

わたしはまるで捕われたようにルフィを見つめてしまった。


「綺麗になったよな、名前」


まるで突風が吹いたみたいだった。

体中を駆け巡るみたいに風邪が抜けていく感じがして、わたしは目を丸くした。

ルフィにそんなことを言われるなんて。き、れい?そもそもルフィの「綺麗」の基準て?わたしのこと?どこをどう見て、きれい、って…?

言葉を発することも出来ず、わたしは口をぱくぱくとさせるしか出来なかった。


「しし、変わってないとこもあるけどな!」


ルフィはちょっとおかしそうに笑ってから、わたしに手を近づけた。わたしは思わず目を閉じてしまう。

な、ななな何だ。ちょ、え、なに。なんですか、!!る、ルフィってこんな顔、できたの?

触れられるのかと思い、温もりを待っていたがそれは来ず。やば、わたしは何を期待してるんだ。そう思って目を開けると


「あんまサンジとかに近づくなよ。あ、チョッパーとかもだぞ」


顔にかかった髪を耳にそっとかけられる。一瞬だけ、耳にルフィの指が当たる。熱いわけないのに、まるで熱々の何かに触れたみたいに、わたしは耳から顔までぶわっと熱くなった。

ちょっと む、とした顔をしてそう言ってからもう一度満足そうに笑うと、みんなの輪の中へと戻っていった。

なにを言ってるんだ、まったく。





それはわたしのセリフ





ルフィこそ、他の女の子の前でそんな顔しないでよね。

熱い耳を抑えながらわたしはそっと溜息をついた。







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20120105