海賊 | ナノ






チョッパー曰く、昨日食べた実が悪かったらしい。分厚い図鑑の真ん中くらいを開いて見せてくれたページには、“一緒に食べた2人の中身が入れ替わってしまう実”と書いてあった。



「大丈夫かい?名前ちゃん」



心配そうに顔を覗き込んでくるルフィ。『大丈夫』と小さく答えて頷くけど、私はその姿に違和感を感じずにはいられない。だって目の前のルフィが、エプロンをして料理してるなんて!いや、中身はサンジなのだから当然と言えば当然なのだけど。



「いやーしかし驚いたぜ。変わった味のする実だなァとは思ったが、まさか中身が入れ替わっちまうなんてな」

『そうだね…』

「ま、そんなに落ち込むこともないって」

『いや落ち込むと言うか!むしろなんでみんなそんな普通なの?!』

「そう悲観的にならなくても大丈夫。チョッパーが薬調合してくれてるんだし、な?」

『……』

「元気出して。名前ちゃんが元気ないと、おれも悲しいし」



そう言ってルフィ…じゃないサンジは、私の前にホットミルクを置いた。一口含むと、少しだけ胸が落ち着いた。
チョッパーも大丈夫って言ってたし、私もそんなに心配してない。明日には元に戻るだろうって思ってる。でもこんな風に元気のない振りでもしておかないと、さっきからばくばくとうるさい動悸を隠しきれない。だって…だって!



『……なんで服着替えたの?』

「え?あァ…ルフィの服、確かに動きやすいんだがどうもしっくりこないんで自分の服に着替えたんだ。おかしいかい?」



その問いかけに、私は勢い良く首を振った。いつもの肩や膝を出した服ではなく、シュッとしたパンツに長袖のシャツの袖を捲って、その上にエプロンをかけている。

だってルフィのこんな姿!見たことないんだもん!いつも少年みたいな格好だし、余りにも格好良くて…!



「名前ちゃん?」

『えっ』

「本当に大丈夫かい?」

『う、うん!全然大丈夫!』

「…なら良いんだけど」

『あっ、ミルクありがとうね』

「いえいえ。元気出たかい?」

『うん!本当にありがとね!』



笑顔を見せながらカップを返す。優しく微笑むルフィがどうしようもなく素敵で、上げた口角がプルプルと震えた。差し出したカップを左手で受け取ったので手を引っ込めようとしたら、そのま手を取られ、そっと手の甲に口付けられた。



『っ、!?』

「君のためならお安い御用さ、プリンセス」



上目遣いになりながらウインクをしたルフィ。もうドキドキし過ぎて目が回ってきた。お、おおお落ち着け私!これはルフィじゃない、サンジなの!サンジなんだってば!だけど…!

「名前ちゃん?」

『る、ルフィ…その…』

「……大丈夫か?名前」



ルフィの真似をしてそういうサンジ。いつもの天真爛漫なルフィからは考えられないくらいの大人な表情と低いトーンの声。声も体も間違いなくルフィなのに。見たことのないルフィの姿に、もう何がなんだかわからないくらい熱くなってきた。ゆらゆらと定まらない視線でルフィの目を見つめると、ゆっくりと顔が近付いてきた。



「……いいか?名前」

『…ルフィ……』



低音の声に、背筋がゾクゾクとした。目の前のルフィはサンジなんだってことも忘れて、私はゆっくりと目を閉じた。



「ちょっと待ったァァァ!」



その時けたたましい音と共にドアが開いて、サンジが飛び込んで来た。



「何やってんだサンジ!」



私とルフィを引き剥がすと、サンジは後ろから私をぎゅっと抱き締めた。



『さ、サンジ?!』

「おれの名前に触るな!」

「フッ……あーあ、残念」



ルフィはそう言うと、エプロンを取って静かに出て行った。残された私は、ハーフパンツにTシャツを着たサンジと2人きりになった。



「大丈夫か名前?!何もされてないか?!」

『う、うん…』

「サンジの奴…!おれ以外の奴とキスするなんて絶対に許さねェからな!」



ルフィはそう言って私の肩を掴み、顔を寄せてきた。



『す、ストップストップ!』

「なっ…なんでだよ!おれだぞ、ルフィだ!」

『わかってるけど、ほら…今は姿がサンジだから…』



そう言うと、サンジ…ルフィはその場にヘナヘナと座り込んだ。



『大丈夫?ルフィ』

「…早く戻りてェなー…」

『ん?』

「早く元に戻って、名前に触りてェ」



口を尖らせてそう言う姿は間違いなくサンジなのに、目の前にいるのは間違いなくルフィで、私は口元を緩ませた。

その日、チョッパーが調合してくれた薬を飲んで、2人は次の日に無事元に戻る事が出来た。



「あー、やっぱ自分の体が一番だな!」

『ふふ、良かった』

「名前にも堂々と触れるしな!」



ぎゅっと抱き締めてくるルフィの背中をポンポンと叩いた。
こうやって元気いっぱいなルフィも大好きだけど、サンジみたいな大人っぽいルフィもたまには良いかも、なんて思ったのは私だけの秘密。



『…でもそれも、ルフィの事が好きだからだよ?』

「ん?何か言ったか?」

『ううん、ルフィ大好きって言ったの!』



そう言って笑って見せると、ルフィもいつもとおんなじ、太陽みたいな笑顔を見せてくれた。



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chuchuさまへの捧げ物でした!
ちゃんと紳士なルフィになってますかね?!なんか紳士さのカケラもないような…笑 個人的に袖を捲ったシャツが好きなので、ルフィにも着せてみました!(`・ω・')← chuchuさんの書くルフィの素敵さには全く及びませんが、楽しんで頂ければ嬉しいです!

*chuchuさまのみお持ち帰りOKです




ア、ルさん…!本当にありがとうございました!サンジとルフィが入れ替わって紳士なルフィにドキ!というなんとも小説じゃ表現出来ないだろみたいな無茶すぎるリクエストをしたのです(笑)それなのに…、こ、んな素晴らしい作品を書いてくださって…!ほんとに大大大感謝です。ドキドキしまくりです。本当にありがとうございました!10万打ヒットおめでとうございました!