「名前早く逃げろ!」
なんでこうなっちゃうの。海賊だから?海賊はいつだって悪者なのね。それは真昼間。珍しく二人で買出しをしていると街で面倒くさい賞金稼ぎに捕まってしまったのだ。迂闊にもわたしは傷を負ってしまったのが一つ目の敗因。二つ目は今日ルフィが朝ごはんを抜きにされていたことだ。いつもよりも力が出なかったため、かなりタイミングが悪かった。
『嫌だ!』
「いいから逃げろ!」
大した傷ではないのに、やられたわたしを見てそう言ったのだ。逆上したルフィは数人の賞金稼ぎに向かっていく。わたしなんかの力じゃ一撃も与えてやれないけど、ルフィに敵う相手じゃないけど、一人で逃げるなんで嫌だ。
『わたしも闘う!』
「逃げろっつったら逃げるんだ!」
『嫌だっ!』
そのとき、背後から男の声がして降り懸かった攻撃に咄嗟に避けた。やるねぇお嬢さん、とニヤリと笑いながら他の仲間が立っていた。なんか、仲間増えてる。
「名前!早く行け!」
『やっ、やだよ!』
少しくらいならまだ闘える。小さな戦力にだってわたしなら
「行け」
覇気とはこれを言うのか。向けられた瞳がわたしを貫いて、心臓をぎゅっと掴まれる衝動に陥って息が出来なくなった。
怖い。
そんな目でわたしを見ないで。ルフィと一緒にいたいだけなのに。怖いよ。ルフィを失いたくないよ。
行けない…。行けないよルフィ…。
心でそう思っても震えた足に意識を持たせ、後ろを向いて駆け出した。あんな傷だらけなのに、わたしを守って命を懸けているのに、わたし何にも出来ないんだ。わたしを思って言ってくれたのは分かるのに。
いつか言ってたよね。「おれが誰よりも強くならなくちゃ、みんな失っちまう」って。わたしは、ルフィがわたしたちを失いたくないように、ルフィを失いたくないんだよ。一人で背負い込まないでよ。
「おれは死なねェよ」
走って、走った。ルフィがどれだけ強くても。ルフィをどれだけ信じていても。ルフィが笑顔で帰ってくる保障が100%な訳じゃない。だから、怖いんだよ。でも、絶対に帰って来る。信じてる。それが唯一わたしに出来ることだから。
失いたくないもの
「おれはお前を守るためなら、死んだっていいんだ」 『そんなこと言わないでよ、バカ』
- - - - 20100421
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