思い切って聞いてみた。だって、やっと二人になれた意味がなくなっちゃう。
『きり丸はさ、女の子とか好きにならないの?』
「女の子?」
小銭を嬉しそうに数える手を止めてきり丸は不思議そうな顔をしてわたしを見た。
『…うん』
「…。」
『…。』
え、な、なんで黙っちゃうの?もしかして聞いちゃいけなかったりした?でもそれはそれで悲しい。先程の嬉しそうな顔とは一変して急におとなしくなってしまったから、なんだか後悔した。
「なんだよ、そんなこと聞くためにここに来たのか?」
『…うっ、』
「ふーん図星か」
『だ、だって気になるんだもん!』
「おれさ、銭にしか興味ねえんだ」
びしっと言われてしまった。わたしも吊られて言いそうになってしまった。わたしもきり丸にしか興味がない、と。で、でもそーか。そーですよね。きり丸だもん、銭にしか目がないドケチなきりちゃんですもん。
あは、もうこの場から消え去りたいかも。告白せずに散るなんて。なんとなく分かってたことなのになんできり丸を好きになったんだろう。
「…そんな顔するなよ」
顔を上げて、きり丸を見たら拗ねるような顔をしていた。けどもっと驚いたのはわたしの手首をぎゅっと握っていたことだ。
わたしはどんな顔してたんだろうか。昔から感情は顔に出やすいって言われてたけど、今回だけは勘弁してほしかった。
『きり、丸?』
腕を捕んでいたその手はするすると手の平まで下がり、さらにぎゅっと掴まれる。
手が熱くなってくのが分かる。手が触れてるだけなのに、どうして。
「この世の終わりみたいな顔するなよ」
『だ、だって…』
もう恥ずかしい。これじゃあもう好きですと言ってしまってるのと同じようなものじゃないか。 でも隠せない。手を掴まれただけでこんなに胸が張り裂けそうなくらい高鳴ってるのが証拠だから。
「でもおれ、名前が好きだよ」
『えっ?』
いま、何て言った?恥ずかしくて俯いていた顔を上げると目の前にはやっぱり拗ねたような顔。
「…こっ小銭の次にな!」
ぶっきらぼうにそう言い放つと、小銭の入った坪に思いっきり手を突っ込んでじゃりじゃりと再び小銭を数えはじめた。
ぷい、とあっちを向いてしまったから表情は分からないのだけれど、ぴょこっと出た赤い耳がわたしにはどうしようもなく愛しくって可愛く思えた。
じゃあ女の子の中では一番ってことでいいですか?
ごめん、嬉しくて涙出そう。
- - - - 20100922
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